土木技術者資格とは?-4つの階層とA・Bコース受験の違い

土木技術者資格という資格を、皆さんはご存じでしょうか?

他の技術系資格と比べると比較的新しい部類の資格ですが、新しいからこそ、周りに取得者がいなかったり、少なかったりして、存在は知っているけど資格取得するメリットがあるかどうかわからないどうやって受けたらいいのかわからない・・・なんて人も多いのではないでしょうか?

本記事では、そんな土木技術者資格について、どういった資格で、どのようにしたら受験できるのか等解説していきたいと思います。

受験を考えている人はぜひ読んでいただき、参考にしてください。

土木技術者資格って何?

概要

土木技術者資格とは、土木学会認定の資格制度で、2001年に始まりました。目的や概要は、土木学会のHPで確認できます。

http://committees.jsce.or.jp/opcet/system/files/1900_all.pdf

本資格制度は、2001年度に開始された土木学会独自の土木技術者資格認定制度です。すでに技術士制度など多くの資格制度が土木分野にはありますが、本資格制度は、土木分野全般を対象として、倫理観と専門的能力を有する土木技術者を土木学会が責任を持って評価し、これを社会に明示することを目的として創設されました。
本制度が目指す土木技術者資格は、名誉を目的とするものではありません。主に実務に携わっておられる土木技術者(教育・研究分野の方も含みます)を対象として実務能力を認定するものです。また、本制度では、資格を通して「土木技術者」のキャリアアップの道筋を示しています。このことにより、本会は、本資格制度が次世代の土木技術者育成の道しるべとなることを期待しています。

土木分野全般の技術力について資格を与える枠組みが求められ、土木学会が開始したもののようですね。

社会に土木技術者としての力を証明することを目的としているほかキャリアアップに使ってほしいというのが土木学会の思いのようです。

特徴

土木技術者資格の特徴として、以下の3点があげられています。

  1. 資格の階層性
    土木技術者資格は、4つの階層に分かれおり、技術者の成長段階に応じて資格が選べるようになっています。4つの階層は、「特別上級土木技術者」「上級土木技術者」「1級土木技術者」「2級土木技術者」です。詳しくは後程。
  2. 資格の更新制
    この資格は5年ごとの更新制となっています。技術士などは取得したら一生そのままですが、土木技術者資格はCPD(継続学習)を前提として、5年ごとの更新制となっています。
  3. 資格の国際性
    資格の更新制を適用することによって、国際的にも評価されやすい資格であるとされています。私は、実感としてはこの点は「?」です。国際的に評価されている場面をあまりしません。新しい資格なので、これからの伸びに期待ですね。

受験資格と試験の概要

では、この土木技術者資格を取得しようとしたときには、どのような試験が課されるのでしょうか?また、その難易度や受験資格はどの程度なのでしょうか?

土木技術者の特徴の一つとして、「4つの階層」に分かれていることを先に述べましたが、この4つの階層に分けて受験資格について説明します。

2019年度版ですが、詳細は以下のページで確認できます。

特別上級土木技術者(Executive Professional Civil Engineer)

要求される専門的能力の定義は以下の通りとされています。

専門分野における高度な知識および豊富な経験に基づく広範な見識により、日本を代表する技術者として土木界さらには社会に対して、多面的に貢献できる能力。

土木技術者資格として最上位に位置する資格ですので、最難関と言えるでしょう。

実績を積み上げ続けた人が受験することが前提となっていますので、若い人や中堅の人がチャレンジするメリットはあまりないかもしれません。

なお、受験資格は以下の通りです。

  1. 受験資格
    ・実務経験年数が17年以上あること。ただし、大学院(修士課程・博士課程)に在籍した期間も実務経験年数に加えることができます。
    ・上級土木技術者資格を持っていること。
    ・土木学会の会員以外の方も受験できます。
  2. 審査要領
    書類審査および口頭試問により行います。
  3. 受験料(消費税込み)
    受験料:会員20,520円/一般32,400円

実務経験が17年以上であるということや上級土木技術者資格を持っている人から選ばれるということからも、経験が必要である資格であるということがわかりますね。

試験としては口頭試験のみですが、書類で実績をしっかりと証明する必要がありますね。

上級土木技術者(Senior Professional Civil Engineer)

上級土木技術者に要求される専門的能力の定義は以下の通りとされています。

複数の専門分野における高度な知識、あるいは少なくとも1つの専門分野における豊富な経験に基づく見識を有し、重要な課題解決に対してリーダーとして任務を遂行する能力。

上級土木技術者取得のための試験は、コースAとコースBに分かれています。

コースAの受験概要は以下の通りです。

  1. 受験資格
    ・下位の資格を保有していなくても、直接受験することができます。(1級、2級などの事前取得は不要です。)
    ・実務経験年数が12年以上あること。ただし、大学院在籍も実務経験と見なします。
    ・土木学会の会員以外の方も受験できます。
  2. 審査要領
    ・書類審査、筆記試験および口頭試問により行います。
    ・筆記試験は、共通問題および専門問題から構成されています。経験問題はありませんが、受験者に「経験に係わる課題」を事前に送付します。
    ・書類審査、筆記試験を合格された方のみ、口頭試問を受けることができます。
    ・「1級土木技術者」、「技術士」または「RCCM」資格を有する方は、受験する資格分野に拘らず、「経験に係わる課題」と口頭試問が免除されます。
  3. 受験料(消費税込み)
    受験料:会員14,040円/一般21,600円

続いて、コースBは以下のような受験概要です。

  1. 受験資格
    ・下位の資格を保有していなくても、直接受験することができます。(1級、2級などの事前取得は不要です。)
    ・実務経験年数が12年以上あること。ただし、大学院在籍も実務経験と見なします。
    ・特別上級土木技術者資格もしくは上級土木技術者資格の認定者、または技術者としての経験が17年以上で受験者の技術力を評価できる方の推薦文が必要です。ただし、1級土木技術者、技術士またはRCCM資格を有している方の受験申込に際しては、推薦文は不要です。
    ・土木学会の会員以外の方も受験できます。
  2. 審査要領
    ・コースBにおいては、書類審査と口頭試問によって審査します。審査の内容については公表しません。また、審査結果に関するお問い合わせにもお答えしかねます。
    ・「1級土木技術者」、「技術士」または「RCCM」資格を有している方については、口頭試問を短縮します。
  3. 受験料(消費税込み)
    受験料:会員14,040円/一般21,600円

他の資格では、受験のコースがわかれていることは稀なので、この「コースA」と「コースB」がわかれていることが少しわかりにくいかもしれません。

コースAは実務経験があれば筆記試験と口頭試問で受験できるのですが、コースBは推薦文が必要となります。その代わり、コースBは口頭試問のみの受験になります。
・コースA・・・筆記試験 + 口頭試問
・コースB・・・推薦文 + 口頭試問
1級土木技術者でも同様のコース訳がありますが、いずれもコースAとコースBは推薦文の有無が大きな違いになっていますね。

1級土木技術者(Professional Civil Engineer)

要求される専門的能力の定義は以下の通りとされています。

少なくとも1つの専門分野における高度な知識を有し、自己の判断で任務を遂行する能力。

こちらも受験はコースAとコースBに分かれており、受験資格や内容は以下の通りとなっています。

コースAについては以下の通りです。

  1. 受験資格
    ・下位の資格を保有していなくても、直接受験することができます。(2級などの事前取得は不要です。)
    ・実務経験年数が7年以上あること。ただし、大学院在籍も実務経験と見なします。
    ・土木学会の会員以外の方も受験できます。
  2. 審査要領
    ・書類審査および筆記試験により行います。
    ・筆記試験は、経験問題(記述式)、共通問題(記述式)および専門問題(記述式)から構成されています。
    ・「技術士」または「RCCM」資格を有する方は、受験する資格分野に拘らず、「経験問題」が免除されます。
  3. 受験料(消費税込み)
    受験料:会員11,880円/一般18,360円

続いて、コースBは以下の通りです。

  1. 受験資格
    ・下位の資格を保有していなくても、直接受験することができます。(2級などの事前取得は不要です。)
    ・実務経験年数が7年以上あること。ただし、大学院在籍も実務経験と見なします。
    ・特別上級土木技術者資格もしくは上級土木技術者資格の認定者、または技術者としての経験が12年以上で受験者の技術力を評価できる方の推薦文が必要です。ただし、技術士またはRCCM資格を有している方の受験申込に際しては、推薦文は不要です。
    ・土木学会の会員以外の方も受験できます。
  2. 審査要領
    ・コースBにおいては、書類審査と口頭試問によって審査します。審査の内容については公表しません。また、審査結果に関するお問い合わせにもお答えしかねます。
    ・「技術士」または「RCCM」資格を有している方については、口頭試問を短縮します。
  3. 受験料(消費税込み)
    受験料:会員11,880円/一般18,360円

こちらもコースAとコースBは推薦文の有無の違いが大きく、試験のやり方が大きく変わりますね。
コースA・・・筆記試験
コースB・・・推薦文 + 口頭試問

筆記試験の有無が変わるなんてちょっと驚きですが、コースBの場合はその分口頭試問は難しい問いが多くあるのかもしれませんね。

2級土木技術者(Associate Professional Civil Engineer)

要求される専門的能力の定義は以下の通りとされています。

土木技術者として必要な基礎知識を有し、与えられた任務を遂行する能力。

2級土木技術者は「土木技術者検定試験」の合格者で、1年以上程度の実務経験があれば登録できます。

最もハードルの低い試験になりますが、大学のテストで出るような問題を解く必要があるため、ベテランの技術者でも忘れてしまっている部分が多いと思います。

また、「土木技術者認定試験」は通年受験が可能で、47都道府県すべてに受験会場があり、Webで択一問題を解くことになります。

試験内容のまとめ

4つの階層に分かれている受験方法については以下の表にまとめられています。
※は、受験者の保有資格などによって受験時間が短縮されることを示しています。

役に立つ?

それでは、ここまで概要や受験方法について説明してきましたが、この土木技術者資格、実際にどのくらい役に立つのでしょうか?

土木学会ではその効果を以下のように謳っています。

公共工事の入札・契約業務のおける認定技術者の活用については、2007年12月に国土交通省の「発注者支援業務の契約方式の見直しについて」の中で、上級土木技術者、1級土木技術者が管理技術者の要件に追加されました。それを受けて、各地方整備局、一部の地方自治体や独立行政法人において、発注者支援業務における配置予定管理技術者として活躍の場が広がってきています。
 民間企業では、入社選考の際にエントリーシート(入社申込書)が使われていますが、土木技術検定試験(2級土木技術者資格審査)での得点や資格の登録の有無の項目を設けて、選考の参考としているケースも見られます。

上級と1級については管理技術者の要件として追加されているほか、民間企業でも活用され始めているそうです。

ただ、現状では、「技術士」の方がより広く活用されており、業界内での認知度も高いのが実態で、それほど重きを置かれていないというのが個人的な実感です。

これはまだ新しい資格であるというのが最も大きい要因だと思うので、今後存在感を増していく可能性は大いにあると考えられます。

おすすめ「土木技術者認定試験」

あまりメリットが大きくないように思える土木技術者資格なのですが、私がお勧めしたいのが「土木技術者認定試験」の受験です。

この試験は、土木技術者資格の中では最下位の2級土木技術者になるために合格する必要のある試験ですが、より上位の資格の取得には必要ありません。

ではなぜおすすめなのか?ということですが、この試験は「基礎的」かつ「広範囲」の問題が出題されることが大きな理由です。

択一式で70問出題されるのですが、ベテランの技術者の皆さんも、自分の専門分野以外の問題は自信が無い人は多いのではないでしょうか?

もちろんそれがまずいというわけではありませんが、技術者として、より広い範囲の知識を身に着けておくことは、言うまでもなく重要なことです

また、大学のテストのような土木工学全般の問題を解く試験は、この試験以外にあまり見当たりません。基礎的な問題も多いので、この土木技術者認定試験に挑戦し、「総復習」すると、とてもいい機会になるのではないかと思います。

そういうわけで、土木を志す学生や若手技術者はもちろん、ベテランの皆さんにも、この土木技術者認定試験の受験をお勧めしたいと思います。

まとめ

土木技術者資格について説明してきました。

  • 土木技術者資格は「特別上級土木技術者」「上級土木技術者」「1級土木技術者」「2級土木技術者」の4つの階層に分かれており、それぞれ受験資格、試験内容が異なる。
  • 「上級土木技術者」「1級土木技術者」の試験にはコースAとコースBがあり、コースBは推薦文が必要である代わりに試験が簡略化される。
  • おすすめは「土木技術者認定試験」の受験

それでは、本記事が土木技術者資格の取得を考えておられる皆様の役に立つことを願っています!

スポンサーリンク

フォローする