鋼構造物を設計・施工するときに特に気を配らないといけないのが「継手」。
土木鋼構造で使用される継手には大きく分けて「溶接継手」と「ボルト接合継手」の2種類があります。
本記事では、そのうち溶接継手の種類について解説していきます。
溶接とは?
溶接という言葉を辞書で調べてみると、以下のような説明が出てきます。
二つの金属の接合部を高熱で溶かして継ぎ合わせること。
Weblio辞書より
溶接にはにはいろいろな種類があり、使用される場面によって使い分けられています。
溶接は「融接」「圧接」「ろう接」の3種類に分類されます。
鉄筋コンクリートの鉄筋継手では「圧接」も使用されてはいますが、土木鋼構造の世界では溶接というとほとんどの場合は「融接」を意味すると考えていいでしょう。
「融接」と呼ばれている溶接は、材料の溶接しようとする箇所を加熱し、母材または母材と溶加材を融合させ、その後凝固させて接合する方法を言います。
有名なのが「アーク溶接」です。
溶接の種類については以下の記事で解説しています。
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溶接継手の種類
溶接継手とは溶接を利用した継手で、その形状により「突合せ溶接」と「隅肉溶接」に大別されます。
突合せ溶接
突合せ溶接とは、鋼板等に開先(かいさき)と呼ばれる溝を設け、その溝に溶接金属を盛ることによって接合する溶接です。
下図のように突合せ継手、T継手、十字継手、かど継手などの接合形式があります。
開先の形状は様々ですが、片側開先よりも両側開先の方が一般的に疲労耐久性が高く、品質のいい継手と言われています。
例えば、下図の①レ型と②K型の開先では、K型の開先の方が品質の高い継手であるということになります。
すみ肉溶接
すみ肉溶接とは、開先を設けることなく、二つの母材の表面の間に溶接金属を盛ることによって接合する溶接方法です。
すみ肉溶接についても、下図のようにT継手、十字継手、かど継手、重ね継手などの接合継手があります。
溶接継手の各部分の名称と長さの定義
溶接部を拡大して見たとき、下図のように各箇所にいろいろな名前が付けられています。
溶接部の名称
余盛り
突合せ溶接の開先やすみ肉溶接で表面から盛り上がった部分の溶接金属のことを余盛り(よもり)といいます。
止端
溶接金属と母材の表面とが交わる部分を止端(したん)と呼びます。
ルート
溶接金属の表面から最も遠い溶接金属の底のことをルートと呼びます。
溶接部の長さの定義
のど厚
突合せ溶接の場合、溶接の余盛りを除いた厚さをのど厚と呼びます。
すみ肉溶接の場合は、溶接のルートを頂点とする二等辺三角形の高さをのど厚と定義しています。
のど厚は、力を伝える断面の厚さとして継手の応力計算で用いられています。
脚長
ルートから止端までの距離を脚長(きゃくちょう)と呼びます。
まとめ
土木鋼構造に用いられている継手のうち「溶接継手」について解説しました。
溶接部は構造物の中で品質を維持するためにとても重要な部分です。
溶接継手の種類や各部分の名称について正確に理解しておきましょう。
- 溶接継手の種類:「開先溶接」「すみ肉溶接」
- 溶接部の各部分の名称:「余盛り」「止端」「ルート」、「のど厚」「脚長」