全国総合開発計画と国土形成計画-開発から成熟へ-時代の流れを映す国土計画とは?

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皆さんは、全国総合開発計画や国土形成計画といった計画をご存知ですか?

日本の国土の開発や発展を手掛けている国土交通省を主幹として、1950年代から脈々と受け継がれている、いわば「国づくり」のための計画のことを言います。

土木に関わる人なら、国土をどのように利用し発展させていくのか、非常に強く関係があると思います。

また、こういった計画はそれぞれの計画が策定された時代の背景を色濃く反映していて、今の日本の国土ができてきた流れについて考える際に役に立つと思います。

これからの日本の国土を作っていく土木分野、建設分野の皆さんにはぜひ読んでいただきたいと思います。

全国総合開発計画とは?

まず、全国総合開発計画とはどのようなものなのでしょうか?

全国総合開発計画(全総)とは、1950年に策定された国土総合開発法に基づいて策定されてきた都市や道路、社会基盤等に関する長期的な整備の計画のことで、1962年に1回目の計画が出されて以降、過去5回にわたって改正されてきています。

全総(ぜんそう)と略され、新しくされるたびに新全総(しんぜんそう)、三全総(さんぜんそう)、四全総(よんぜんそう)と呼ばれてきました。

改正の度に国土審議会にて議論され、策定されてきたのですが、最初の全総の出された1962年からは時代も大きく変わってきています。

全総では、最大の目標を国土の均衡ある発展とし、その時代その時代にあった課題を反映して策定されてきています。

過去にあった5つの全総について説明していきます。

全国総合開発計画の比較

全国総合開発計画

最初の全総は1962年10月5日、池田内閣時代に閣議決定されました。

当時は国民所得倍増計画が策定されるなど、日本が高度経済成長期に突入しつつあるタイミングで、地域間の均衡ある発展を基本目標として、計画されました。

この時の開発は拠点開発構想と言われる構想の下、太平洋ベルトを中心に連鎖反応的に開発を進めていく方式がとられました。

新全国総合開発計画(新全総)

新全総は1969年5月30日、佐藤内閣時代に閣議決定されました。

当時は高度経済成長期のど真ん中。GNPがアメリカに次ぐ2位へと躍り出た時期でもありました。

この時は、豊かな環境の創造を基本目標とし、大規模プロジェクト構想の基、新幹線や高速道路などのネットワークが作られていきます。

第三次全国総合開発計画

三全総は1977年11月4日、福田内閣時代に閣議決定。

日本の高度経済成長期は終わりに差し掛かっていましたが、まだまだ成長期だった時代です。

当時は大都市部への人口集中が問題になっていたため、過疎過密問題の解決のため、定住構想を基に開発がなされました。

第四次全国総合開発計画

四全総は1987年6月30日、中曽根内閣の時代に閣議決定されました。

この時代はバブルがはじける直前で、あると共に、国際化や環境整備に関する問題意識が大きな時代でした。

多極分散型国土の構築を基本目標とし、特色のある地域と地域(点と点)を交通・情報で結ぶ交流ネットワーク構想を基本構想としました。

21世紀の国土のグランドデザイン

21世紀の国土のグランドデザイン(五全総)は、1998年3月31日、橋本内閣にて閣議決定されました。

この時は既に地球市民の考え方が一般的になっており、情報化技術も進んできていたため、よりグローバルな視点で計画がなされました。

基本目標としては多軸型国土構造を目指し、いくつかの国土軸で発展するべく国土の開発計画が立てられました。

五全総では、他の全総と違い、投資総額を示さずに、投資額の重点化、効率化の方向性のみを示したことも特徴の一つです。

国土形成計画とは?

では、国土形成計画とは何なのでしょうか?

全総の策定から五全総に至るまで、国土の開発を目的とした計画がなされてきました。

しかしながら、2005年から人口減少社会に入り、国土の量的な拡大を目指していた国土開発計画から、質的な向上を目指すビジョンへと変更する必要性が出てきました。

そこで策定されたのが国土形成計画。

国土形成計画は、全総の根拠法であった国土総合開発から名称を変更した「国土形成計画法」に基づき策定され、国土の利用、整備及び保全を推進するための総合的かつ基本的な計画 と定義されています。

国土形成計画も全総と同じように、時代の流れを反映して改正がなされてきています。

全国総合開発計画と国土形成計画をまとめた表

第1次国土形成計画

2008年7月、に国土形成計画が福田内閣にて閣議決定、策定されました。

便宜上「第1次」としていますが、当時は単に国土形成計画と言われていました。

第1次国土形成計画が策定された背景としては以下の社会情勢の変化があります。

  • 本格的な人口減少社会の到来、急速な高齢化の進展
  • グローバル化の進展と東アジアの経済発展
  • 情報通信技術の発展

前述したように、量的な拡大による開発基調から、成熟社会型の計画に向けて質的な向上を目指した計画となっています。

また、全総時代の国主導の計画から、地域ブロックごとの自発的な計画を促すために、「全国計画」と「広域地方計画」と分けて制定されました。

第2次国土形成計画

第2次国土形成計画は、国土のグランドデザイン2050(2014年7月国交省策定)」に基づいて、対流促進型国家をコンセプトに2015年8月に安倍内閣にて閣議決定、策定されました。

策定の背景として、以下のような計画とすることを目指しています。

  • 本格的な人口減少社会に初めて正面から取り組む国土計画
  • 地域の個性を重視し、地方創生を実現する国土計画
  • イノベーションを起こし、経済成長を支える国土計画

これらを基に、対流促進型国家を目指しています。

対流促進型国家を目指す上でのキーワードは、コンパクト+ネットワーク

「対流」と言うのはいろいろな意味がありますが、それぞれ個性を持った地域が互いに連携していくことを主に意味しています。

それにより地域の発展や、経済の発展、技術の発展を促していこう、と言うのが目的となっています。

全国総合開発計画と国土形成計画の違い

それほど目的としては変わらないように見える全国総合開発計画と国土形成計画。

国土の計画と言う意味では同一で、策定された時期は違うのというのは誰にでもわかるのですが、中身は何が違うのでしょうか?

その答えは、開発」なのか?「成熟」なのか?と言って間違いないでしょう。

全国総合開発計画は、前後の成長期真っただ中で、高度経済成長期もこの計画に基づいて「開発」がなされてきました。

イケイケドンドンの時代だったともいえるでしょう。

この時は経済も成長しますし、人口も増える。社会資本が未発達な部分も多量にある。という社会的背景がありました。

しかし、バブルがはじけ、21世紀に入って、ついに人口減少が始まる時代になりました。

そうなれば、人口は減るし経済の発展も緩やか(後退もあり得る)、インフラは老朽化・・・という時代に入っていきます。

そこで、国土の質的な向上を目指した国土形成計画へと、国土計画が移り変わっていったんですね。

法律の名前や計画の名前からも「開発」の言葉が消えていることから、この考え方の違いが読み取れます。

国土計画から見る時代の流れ

全国総合開発計画と国土形成計画という国土計画は、策定された時代背景や社会的なニーズに基づいて、国土計画も過去7回にわたって更新されてきました。

20世紀は戦後の経済成長や高度経済成長もありましたし、インフラ整備もまだまだだったことから、開発がどんどん進められていきました。

最初は開発拠点を設けて発展をさせていこうとしたり、全国的な道路や鉄道などの大規模なプロジェクトを推し進めていく考え方でした。

しかしその後は都市への人口集中や環境問題などが問題視されるようになり、地方への定住や人口の分散や地域間の交流が目指されるようになります。でも、なかなかこれは今でも完全に解決できているわけではありませんね。

21世紀に入っても、地域地域が個性をもって、かつ地域と地域を結びつけることによって国土を形成していく計画になっていますが、未だに都市圏への人口集中は続いているという状況です。

では、今後はどのように変化していくのでしょうか?

第2次国土形成計画が先10年を見越して規定されてはいるものの、急激な社会の変化により、いつ変更の必要性が出てくるかわかりません。

今後のキーとなってくるのは、私は情報通信技術だと考えています。

国土計画の際に重要になるのは人とモノの移動です。現在、情報通信技術によってこの移動の様相は昔と比べて大きく変わってきていますよね。

でも、それが社会インフラや国土の整備には未だ十分に反映されていません。技術はありますが、それを活かしていない状況です。

今後、様々な情報通信技術を活かすようになり、それが具体的に国土計画にどのように影響していくのかが今後の重要な視点だと考えています。

関係する他の計画

国土計画と似ている計画に、国土利用計画と言うものがあります。

国土利用計画は、国土の利用に関する基本構想で、国土の利用目的に応じた区分ごとの規模の目標等について定めるものとされています。

農地や住宅、森林など、国土がどのように使われていくべきかの目標を立てている基本的な構想ですね。

国土形成計画等他の計画との位置付けを示した図を貼っておきます。見てみてください。

国土利用計画の位置付け
国土交通省HP(http://www.mlit.go.jp/common/001120149.pdf)より

国土利用計画も過去3回策定されています。

1977年に第1次国土利用計画、1986年に第2次、1996年に第3次国土利用計画が策定されてきました。

まとめ

国では国土をどのように開発し、整備し、形成していくか、かなり昔から長期的な視点で計画を立ててきています。

その計画には時代の動きや流れが反映されていますし、時代時代で目指すべき目標が変わってきています。

いろいろな公共事業や大規模な工事を経験してきた人も多いと思いますが、今回触れた国土計画が源流の計画になっている場合も多いと思います。

なかなか目標が達成されることばかりではないですが、こういった国の目指す姿を意識することは、土木技術者としては大切ですし、ビジネスチャンスにもつながっていくかもしれません。

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