PPP/PFIとは?―考え方や特徴を解説

従来公共事業として行われてきた事業を、民間の資金や技術、ノウハウを用いて進めていくPPP/PFIという事業の進め方、考え方が国内外に広がっています。

PPPとはPublic Private Partnershipの略で、官民連携とも呼ばれます。
PFIはPrivate Finance Initiativeの略で、公共施設等の建設、維持管理、運営等を民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用して行う手法 のことを言います。

いずれも、公共的な建造物やインフラをどのような事業で新設、維持していくかに密接にかかわっており、これからの土木を考える上でこれらの考え方を知っておくことは重要であると思います。

PPP/PFIの考え方や歴史について、まとめていこうと思います。

PPPとPFIの違いについて

ほとんど同じ意味で使われることの多いPPPとPFIという二つの言葉ですが、意味はちょっと違います。

まず、どのように違うかと言う点について触れておきましょう。

下図を見て頂ければ一目瞭然ですが、PPPはPFIも含んだ官民連携に関するより広い概念を表しています。

PPPの考え方の中には、PFI以外の民間委託等の方式も含まれているのがわかりますね。

PPP/PFIの歴史

イギリスにおけるPPPの導入

PPPの考え方は、1997年にイギリスで発足した労働党ブレア政権が打ち出しました。

それまでのイギリスは保守党政権で、官から民へ事業主体をどんどん移していき、PFI事業に関しては、できる限り民に委ねるようにしており、リスクも民への移転が進んでいました。

一方、ブレア政権では、官と民のリスクの最適負担という考え方へと変化し、大きなPPPと言う概念の中にPFIも位置付けられるようになりました。

日本では最新の事業の考え方だと思われている部分もありますが、実は世界に目を向けると1990年代には既に存在していた概念なんです。

こういった官→民への事業主体の移管はイギリスが世界に先立って進めてきており、日本において導入する際の事業のリスクやメリットデメリットを知る上では参考になるものと考えていいでしょう。

日本での導入

世界では1990年代には既に存在し、広く導入されてきたPPP/PFIの考え方ですが、日本ではあたかも最新の考え方のように言われていますね。

でも、日本でも法律の整備は意外と昔から行われてきました。

平成11年の「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進 に関する法律」です。通称PFI法ですね。

この法律では、民間の資金とノウハウを活用して、公共施設の整備や建設、維持管理、運営などを行い、また、公共サービスの提供を行う手法を定めており、過去数回にわたって改訂されてきました。

日本では法律ができた平成11年から事業数、契約金額共に大きく伸びており、平成30年度までで累計666件、5.8兆円の事業が行われているようです。

内閣府民間資金等活用事業推進室HPより

PFI事業の種類とその特徴

PFIは幅広い意味を持った言葉です。その中に、色々な事業があるので、その種類や特徴などについてまとめたいと思います。

事業費回収方法による分類

事業費の回収方法により、PFI事業は大きく4手法に分類できます。

従来からの手法3種類と、コンセッション方式と呼ばれる方式1種類です。

従来手法

①サービス購入型
発注者が事業期間にわたって、民間事業者に対してサービス対価を支払う方法です。
民間事業者は自ら調達した資金(銀行からの融資など)で施設を新設し、その後長期間にわたって管理し、発注者である公的機関から事業期間にわたって定額の業務委託料を受け取る仕組みです。
発注者側には、施設の建設費用を一度に拠出することなく、事業期間にわたって割賦払いし平準化することが可能というメリットがあります。

②独立採算型
民間事業者が利用料金を直接収受し、利用料金収入のみで費用と利益を回収する方法。
従来の独立採算型では、建設費用などまとまった資金を工面できなかったため、既存の公民館やスポーツセンターの運営等、大掛かりな投資を伴わないものが多いようです。

③混合型(ジョイント・ベンチャー型)
基本的には独立採算型であるものの、公的支援制度を活用するなどして一部施設を整備する方法。

コンセッション方式

水道事業などで最近話題にもなっているコンセッション方式。

従来手法と最も大きく異なる点は、「事業の経営主体」です。
コンセッション方式では、民間事業者が経営主体となるのに対し、前述のそれ以外の方式では公的機関が経営主体となります。

経営主体となることは、当該事業に対する最終的な経営責任を持ち、重要な方針、計画や施策の決定権を持つことを意味するので、コンセッション方式においては、当該事業における民間事業者の責任と経営の自由度が大きく増すというのが大きな特徴です。

施設の所有形態による分類

今度は、施設の所有形態でも分類してみましょう。

BTO方式

BTO方式とは、Build-Transfer-Operate方式の略で、民間事業者が施設を設計・建設し、完了後に公共部門に譲渡。

公共部門で施設を保有し、民間事業者がサービスを行う方式です。

建設して(Build)引き渡してから(Transfer)運営する(Operate)方式なのでBTO方式と呼ばれています。

BOT方式

BOT方式とは、Build-Operate-Transfer方式の略で、民間事業者が施設を設計・建設し、そのまま施設を保有して公共サービスを提供。その後、事業完了後に施設を公共部門に引き渡すことを言います。

建設して(Build)運営してから(Operate)引き渡す(Transfer)方式なので、BOT方式と呼ばれるんですね。

BOO方式

BTO方式、BOT方式の他に、BOO方式と呼ばれるものもあります。

BOO方式とは、Build-Own-Operate方式の略で、民間事業者が設計・建設し保有したまま運営、事業が終わったら施設を解体・撤去する、と言う方式です。

民間事業者がずっと施設を保有しているという方式です。

RO方式

RO方式とは、Rehabilitate-Operate方式のことで、民間事業者が既にある施設を改修した後、保有しながら公共サービスの提供を行う方式です。

課題

それでは、日本でPPP/PFI事業を推進していく上での課題はどのようなところにあるのでしょうか?

海外の例を考えてみると、例えばイギリスでは、PFI事業を行う民間企業の儲けすぎが問題になり、国民の批判を買ったことにより事業が縮小していった・・・ということがあります。

民間企業なので利益を出すために事業を行うのですが、もともとが公共事業なので、一般的に利益は利用者(市民)に還元する必要があります。

そのあたりの加減がよくなかったのでしょう。

ただ、海外でうまくいっていないから日本でもダメと言うのは少し短絡的すぎますね。

民間の知識やノウハウを活用していくという概念は同じでも、そもそもの法律の成り立ちや文化が違うので、当然各国でその事業を取り巻く環境が違うと考えるべきでしょう。

では、日本ではどのような課題が考えられるのでしょうか?

サービスの低下

従来の公共事業では単年度契約が基本となっていましたが、PFIでは複数年連続で契約することができるのが大きな特徴の一つです。

事業の早期化やコストの縮減が可能なのですが、この場合、競争原理が働かなければ、サービスの質の低下が起きてしまう可能性があります。

事業の内容によっても異なりますが、適度な競争を産むように、契約手法の検討等を行っていく必要があるでしょう。

責任の所在が不明確に

PFI事業では包括的な契約と言うのも大きな特徴です。

この場合、民間に包括的に事業を任せるため、官と民の責任の所在がどこなのかわかりにくくなってしまいます。

どちらも責任の範囲だと思っていなかった、なんてことがあったら市民は困りますよね。

事業開始時にしっかりとした取り決めをして事業を進めていく必要があるでしょう。

事業破綻のリスク

民間事業者が資金を調達したり、自ら利益を出すために事業を行うことは、サービスの向上やコスト縮減につながっていくと考えられます。

しかし、資金調達ができなかったり事業リスクが適切に見込めていなかったりすると、サービスの低下や、大きな損失、最悪の場合事業の破綻等が起こってしまう可能性もあります。

これには、官がどのように絡み、どのように監督していくかが非常に重要です。

自由度が低すぎると民が事業を行う意味がありませんし、自由にしすぎるとリスクを背負う可能性もあります。

事業の内容から、リスクの分担をどう考えるか、慎重に検討しなければなりません。

PPP/PFIを進めるべきか?

近年、国はいろいろな公共事業で民間の知恵を活用するため、PPP/PFIを導入しようと動いていますが、サービスの低下や料金の増額などが懸念されているのも事実です。

では、PPP/PFIはこのまま推進していくべきなのでしょうか?

自分で問いを投げかけておいて申し訳ないですが、本来は「PPP/PFIで行くか、やめるか」の2択で考えるべきではありません

PPP/PFIでは、前述のように良いところも悪いところもあります。個々の条件で適切に判断することが必要だと考えます。

ただし、今の日本は財政赤字が膨らんでおり、政府、行政の資金を使った事業だけではどうにもならなくなってきているのも事実です。

その観点で考えると、サービスを維持し、コストの縮減を図っていくためにはPPP/PFIを推進していくことは必要不可欠であると私は考えています。

もちろん、サービス低下や料金値上げなどの可能性もあるので、市民へのサービス水準が下がらないように適切な事業評価と対策を打って進めていかなければなりません。

どうやったらできるのか?そもそも不可能なのか?

PPP/PFI全部が〇か×かではなく、よく議論を深めていくことが大切です。

まとめ

PPP/PFIについて、皆さんはどのような考えをお持ちでしょうか?

どの事業も政策もそうですが、良い面と悪い面があります。

新しいようで新しくないこれらの考え方ですが、日本でも本格的な議論が始まっています。

土木のこれからを考える上で、事業がどのように進められていくかを考えることは非常に重要です。メリットとデメリットをバランスよく考えて意見を持つようにしましょう。

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