せん断力を受ける鉄筋コンクリート部材-ひび割れの発生メカニズムや破壊形式

鉄筋コンクリート部材では、せん断ひび割れやせん断破壊は絶対に避けなければならないと言われています。

絶対に避けなければならないからこそ、せん断ひび割れやせん断破壊は発生しないように設計基準などは作られており、そのメカニズムについては実務上着目されることは少ないのではないでしょうか?

そこで今回は、普段あまり問題にならない(はずの)せん断ひび割れとせん断破壊のメカニズムやその種類について解説していきます。

コンクリート構造の基本の1つなので、しっかりと頭に入れておきましょう。

せん断ひび割れとは?

発生メカニズム

せん断ひび割れはどのようにして発生するのでしょうか?

そのメカニズムは実はミクロに見ると曲げひび割れの発生メカニズムと同じく、「コンクリートは引張に弱い」という特徴に基づいています。

どういうことか、図を見ながら考えていきましょう。

上の図は、中央部に2つの集中荷重を受ける単純梁の模式図です。

鉄筋コンクリートにおけるせん断ひび割れは、上の図のように生じるのが一般的です。

図のひび割れが生じている部分を拡大して見てみると、図の吹き出し部分の通り応力が生じています。

引張が生じている方向に垂直な方向にひび割れが生じることがわかりますね。

せん断ひび割れは「斜めひび割れ」とも呼ばれることがあり、梁部材であれば斜めに進展するという特徴があります。

せん断ひび割れと呼ばれるひび割れは、ウェブせん断ひび割れと曲げせん断ひび割れに大別できます。

ウェブせん断ひび割れ

ウェブせん断ひび割れとは、ウェブの曲げひび割れがない領域に生じるせん断ひび割れを指します。曲げモーメントが小さく、せん断力が大きい場合に生じやすいひび割れです。

曲げせん断ひび割れ

一方、曲げせん断ひび割れは、曲げによって生じた曲げひび割れが、曲げとせん断の影響を受けて斜めに進展していくひび割れで、曲げモーメント、せん断力ともに大きいときに発生しやすくなります。

せん断ひび割れと破壊形式

せん断ひび割れが進展し、せん断破壊を生じるときの破壊形式について見ていきましょう。

せん断破壊は載荷点から支持部までの水平距離:aと有効高さ:dで表されるせん断スパン比:a/d(エーバイディーと呼びます)によっていくつかの破壊形式に分けられます。

それぞれの破壊形式についてまとめていきましょう。

なお、a/d<2.5の部材はディープビームと呼ばれ、せん断補強筋の効果や挙動については明らかになっていないため、設計上特別な考慮が必要な場合があります。併せて覚えておきましょう。

せん断引張破壊

せん断引張破壊とは、ウェブせん断ひび割れや曲げせん断ひび割れが進展して破壊に至るもので、一般的には、急激な破壊が生じるとされています。

鉄筋とコンクリートとの付着部分が割裂することで生じるため、付着割裂化破壊とも呼ばれています。

せん断引張破壊は、せん断スパン比a/dが、1.0~2.5のときに発生しやすいと言われています。

せん断圧縮破壊

せん断圧縮破壊とは、せん断ひび割れの進展によりコンクリートの圧縮域が減少し、この圧縮部のコンクリートが圧縮破壊することにより破壊に至る破壊形式です。

こちらは急激に破壊が進展するものではありません

PC部材のせん断破壊では、この破壊形式が多いと言われており、せん断引張破壊と同じく、せん断スパン比a/dが、1.0~2.5のときに発生しやすいと言われています。

斜め引張破壊

斜め引張破壊は載荷点と支点の間にせん断ひび割れが生じるのとほぼ同時に破壊に至るため、脆性的な破壊挙動となります。

せん断スパン比a/dが2.5~5.5程度の場合発生しやすいと言われています。

まとめ

本記事では、せん断ひび割れやせん断破壊について書いてきました。

せん断破壊は一般的に、「脆性的」に発生すると言われています。

すなわち、せん断破壊の予兆(せん断ひび割れ)が見られてから一気に破壊に至ることがあるため、対処のしようがありません。

一方、曲げ破壊は脆性的に発生しないので、(もちろん避けなければなりませんが)発生の予兆が見られてから、避難や通行止め等の対応が可能と考えられます。

そのため、曲げとせん断を受けるコンクリート部材では、ただただ鉄筋をたくさん入れればいいというだけではなく、せん断破壊よりも曲げ破壊が先行するように設計をしなければなりません

せん断力を受けるコンクリート部材について書いてきましたが、コンクリート部材のせん断について設計上どのように考えられているのか、メカニズムとともに頭に入れておきたいところです。

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