問題
相対湿度とコンクリートの中性化速度係数の関係を表す次の(1)~(4)の概念図のうち、適当なものはどれか。ただし、セメントの種類によらず各コンクリートの水セメント比は同じとする。
※2020年度コンクリート診断士試験問題
解説
コンクリートの中性化速度がどのような要件によって決まってくるのかを理解しておかなければわからない問題です。
この問題では、セメントの種類と中性化速度係数の関係と、相対湿度と中性化速度の関係をそれぞれ理解しておくことが求められています。
セメントの種類と中性化速度係数の関係
中性化は、本来アルカリ性であるはずのコンクリートが、二酸化炭素の影響で中性に近付いてしまうことにより、不働態皮膜が破壊され、鉄筋腐食が生じることにより劣化が進行します。
そのため、コンクリートのアルカリ性が強いほど中性化は起こりにくく、逆に、コンクリートのアルカリ性が弱ければ中性化は起こりやすいということになります。
高炉スラグ微粉末やフライアッシュなどの混和材を用いると、コンクリートのアルカリ性が弱くなります。
それにより、アルカリ骨材反応に対する抵抗性が向上するというメリットがあるのですが、中性化速度は速くなる傾向があります。
混和材の配合量によって中性化速度への影響は変わってきますが、高炉セメントB種については、普通ポルトランドセメントと比べて中性化速度が大きくなることが一般的に知られています。
以上から、中性化速度係数が高炉セメントB種の方が大きくなっている(1)か(3)に答えを絞り込むことができます。
相対湿度と中性化速度係数の関係
中性化は、空気中の二酸化炭素が①コンクリート内部に侵入、拡散し、②炭酸イオンや炭酸水素イオンがセメント水和物と反応する(炭酸化反応)ことにより進行していきます。
①コンクリート内部への侵入、拡散については、ある程度コンクリートが乾燥していることが必要です。
二酸化炭素はコンクリートにある空隙を伝わってコンクリート内部まで侵入していきます。しかし、含水率が大きい湿ったコンクリートだと空隙がふさがってしまうため、二酸化炭素が内部まで侵入できず、中性化速度が小さくなります。
一方、②炭酸イオン、炭酸水素イオンのセメント水和物との反応は水分が必要であるため、乾燥していると進行しません。
以上を考えると、相対湿度が大きすぎても小さすぎても①か②のどちらかが進行しないため、相対湿度40%~60%くらいがもっともバランスが良く(悪く?)、中性化が進行しやすいことが知られています。
よって、答えは(3)か(4)のどちらかになることが分かります。
解答
以上から、解答は(3)です。
中性化速度がどのような場合に大きくなり、どのような場合に小さくなるかを理解しておくことは重要で、コンクリート診断士にもよく出題されます。
しっかりと理由と一緒に理解をしておきましょう。