問題
下図は、電気的等価回路モデルを用いて分極抵抗法(交流インピーダンス法)の原理を説明したものである。原理を説明する記述中の( A )~( C )にあてはまる語句として適切なものをそれぞれ選べ。
コンクリート表面に接触させた外部電極から、コンクリート中の鉄筋な微弱な電流を流すと電圧変化が生じる。周波数が異なる電流を流した時の電圧変化の違いを基にR1およびR2が求められる。
分極抵抗は( A )であり、この値は一般的に、鉄筋の腐食速度が大きいと( B )。一方、水セメント比の( C )コンクリートほど、R2の値は小さくなる。
( A )
① R1
② R2
③ C1
( B )
① 大きい
② 小さい
( C )
① 大きい
② 小さい
※2008年度のコンクリート診断士試験の問題をアレンジしたものです。
解説
コンクリート診断士試験の問題として出題される、分極抵抗法による鉄筋腐食の診断に関する問題です。
分極抵抗法の中でも、本問題にあるような交流インピーダンス法に関する問題は頻出で、実際に利用される頻度も高い手法です。
また、等価回路モデルは電気化学的な内容でもあるため、深く理解する余裕のない人はある程度理屈は割り切って覚えてしまうことも大切かもしれません。
( A )( B )( C )の回答
等価回路モデルの中で、分極抵抗はどれにあたるのかを理解しておかなければならない問題です。
R1、R2、C1それぞれが何をモデル化しているのかを理解しましょう。
まずR2は、「溶液抵抗」と呼ばれ、コンクリート中の「溶液」の抵抗を指します。コンクリートの水セメント比が大きくなれば溶液抵抗の値は小さくなります。
次にR1ですが、これが「分極抵抗」と呼ばれるものです。電気化学的分極による抵抗で、腐食速度が大きければ分極抵抗は小さくなります。
C1は電気二重層と呼ばれるもので、コンデンサーのような働きを示します。金属と溶液との界面などにできる、+イオンと-イオンの層のことを言います。
よって、( A )、( B )、( C )の答えは
( A )①
( B )②
( C )①
となります。
考え方
腐食速度が大きい場合に抵抗が大きいか小さいか、水セメント比が大きい場合はどうか・・・などの関係性については、回路モデルの中身をしっかりと理解しているかどうかがわかるのでよく問われます。
これを単純に記憶しようとすると大変なので、イメージをつかんでもらうための考え方を書いておきます。
鉄筋は腐食が進行すると自然電位が小さくなります。鉄の自然界の状態(腐食状態)は自然電位も小さい状態なので、それに近付こうとするんです。
もともと外部電極は鉄筋より自然電位が高いため、外部電極と鉄筋との電位差は大きくなり、電流が流れやすい状況になるはずです。
電流が流れやすくなるということは、この抵抗に相当する分極抵抗は、腐食が進行している場合は小さくなることがわかりますね。
まとめ
以上から、正解は以下のようになります。
( A )①
( B )②
( C )①
腐食速度と抵抗値との関係性はしっかりと理解しておきましょう。