コンクリートの特徴を左右するセメントの種類

コンクリートの特徴を大きく左右する、セメントの種類について説明していきます。

適材適所で色々な種類のコンクリートを使い分けるためにも、各種セメントの特徴や注意点等は是非とも把握しておきたいところです。
本記事では、各セメントの種類や特徴、用途についてまとめています。

さらに深く、セメントの種類を左右する「セメントの成分」については、こちらの記事にまとめていますので、知りたい方はチェックしてください。

セメントの主たる成分について。なぜ、各種セメントがそれぞれの特徴(低熱、早強など)を持つのか?それはセメントの成分を紐解けばわかります。

セメントの種類

セメントは、JISに規定されているもので大別すると①ポルトランドセメントと、②混合セメント、③その他のセメントがあります。
この3種類について説明します。
ちなみに、JISにないものは「特殊セメント」と呼ばれ、こちらもいろんな種類があります(この記事では割愛)。

①ポルトランドセメント
・普通ポルトランドセメント
・早強ポルトランドセメント
・超早強ポルトランドセメント
・中庸熱ポルトランドセメント
・低熱ポルトランドセメント
・耐硫酸塩ポルトランドセメント

②混合セメント
・高炉セメント
・フライアッシュセメント
・シリカセメント

③その他のセメント
・エコセメント

それでは、それぞれの特徴を見ていきましょう!

①ポルトランドセメント

普通ポルトランドセメント

最も多く使われているセメントです。国内の約70%はこの種類のセメントと言われています。
説明不要ですかね。その名の通り、一般的なポルトランドセメントです。

早強ポルトランドセメント

これもその名の通り、強度発現の早いセメントです。緊急を要する工事などに用いられます。
また、寒冷地での工事にも用いられることが多いです。これは、低温条件においても良好な強度発現性を示すことや、水和熱による発熱も大きいことから所要の養生温度や初期強度の確保が難しい冬期や寒冷地での工事に適しているためです。

成分は、初期強度の大きいけい酸三カルシウム(エーライト、C3S)を多く含みます。
また、水と接する面積(比表面積)が大きくなるように、細かい粒子を多く含んでいます。

普通セメントの3日強度を1日発現します。

超早強ポルトランドセメント

早強ポルトランドセメントより早く強度発現するセメントです。緊急を要する工事に用いられます。

普通セメント7日強度を1日で発現します。

中庸熱ポルトランドセメント

水和熱が低く、マスコンクリートによく用いられるセメントです。
初期強度は小さいですが、長期的には密実になるため、長期強度が大きく、乾燥収縮が小さく、硫酸塩に対する抵抗性が高いことが特徴です。

成分は、水和熱を低くするためにけい酸三カルシウム(エーライト、C3S)、アルミン酸三カルシウム(アルミネート相、C3A)の含有量を少なくしています(C3S:50%以下、C3A:8%以下)。結果としてけい酸二カルシウム(ビーライトC2S)の多い組成です。

低熱ポルトランドセメント

中庸熱ポルトランドセメントよりも水和熱を低く抑えています。材齢初期の圧縮強さは低いセメントですが、長期において強さを発揮する特徴を持ち、コンクリートの低熱性、高強度性および高流動性に対応します。高流動コンクリートに用いられます。

成分としては、けい酸二カルシウム(ビーライトC2S)を40%以上含み、アルミン酸三カルシウム(アルミネート相、C3A)を6%以下としてます。

耐硫酸塩ポルトランドセメント

硫酸塩抵抗性の低いアルミン酸三カルシウム(アルミネート相、C3A)の含有率を4%以下に抑えることにより、耐硫酸塩性を高めたセメントです。
硫酸塩劣化の起きやすい温泉地などのコンクリート構造物に用いられます。
耐海水性にも優れているのも特徴の一つです。

②混合セメント

高炉セメント

高炉スラグ微粉末の電子顕微鏡写真(JCI設立50周年記念写真集、暮らしの中のコンクリートより)
(http://www.jci-net.or.jp/photo/archive/detail_db.php?id=226&page=1)

製鉄所から出る高炉スラグの微粉末を混合したセメントで、長期強度の増進が大きく、水密性、耐海水性、化学抵抗性に優れているため、河川工事湾岸工事に多く用いられます。

高炉スラグは、セメントの水和反応で生じた水酸化カルシウムCa(OH)2に刺激されると徐々に水和反応を起こす性質(潜在水硬性といわれる)をもっているため、セメントと同じように硬化するんですね。

ただ、固まる速度が遅いため、特に初期の養生を入念に行う必要があります。
また、スラグの塩基度が大きいほど水和反応が活性化されるため、スラグの塩基度は1.60%以上と規定されています。

高炉スラグ微粉末の分量によって種類が分けられています。

  • A種:5%~30%
  • B種:30%~60%
  • C種:60%~70%

なお、B種とC種はアルカリ骨材反応抑制効果を有するとされています。

国内で使用されるセメントの約20%がこのセメントと言われており、普通ポルトランドセメントの次によく使われているセメントなんです。

フライアッシュセメント


フライアッシュの電子顕微鏡写真(JCI設立50周年記念写真集、暮らしの中のコンクリートより)
(http://www.jci-net.or.jp/photo/archive/detail_db.php?id=226&page=1)

主に火力発電所で石炭の燃焼時に発生するフライアッシュ(微粉状の石炭灰)のなかで良質なものを混合したセメントです。良質なフライアッシュは球形なのでコンクリートのワーカビリティが向上します。

また、水和熱が低く、乾燥収縮が少ないのも特徴で、マスコンクリートに多く用いられます。
フライアッシュ自体は水和反応しませんが、含まれている二酸化けい素SiO2が、セメントの水和反応によって生じた水酸化カルシウムCa(OH)2と反応して水和物(けい酸カルシウム水和物)を生成します(ポゾラン反応)。この水和物は緻密で耐久性や長期強度に優れています。

こちらも高炉セメント同様、フライアッシュの分量によって種類分けされています。

  • A種:5%~10%
  • B種:10%~20%
  • C種:20%~30%

シリカセメント


シリカフュームの電子顕微鏡写真(JCI設立50周年記念写真集、暮らしの中のコンクリートより)
(http://www.jci-net.or.jp/photo/archive/detail_db.php?id=226&page=1)

 天然のシリカ質混合材を混合したセメントです。
(シリカ質混合材:二酸化けい素SiO2を60%以上含んでいるポゾラン反応しやすい物質)

耐薬品性に優れていますが、強度発現までに時間がかかるので注意が必要です。
主に、コンクリート製品に使用されます。

シリカフュームの分量によって、種類が分かれています。

  • A種:5%~10%
  • B種:10%~20%
  • C種:20%~30%

③その他のセメント

エコセメント

原料となる廃棄物の影響により、ポルトランドセメントより塩素が僅かに多く含まれていますが、性能は普通ポルトランドセメントと同等です(ただし、高強度コンクリートには適しません)。

廃棄物問題の解決を目指して開発されたセメントで、都市部で発生する廃棄物を主原料とし、主に都市ゴミ焼却灰を使用しています。エコセメントは2002年にJIS R 5214として規格化されており、その中でエコセメント1tの製造につき、原料として廃棄物を500kg以上用いる事が規定されています。

まとめ

セメントの種類の中で、JISに規定されているものについてまとめました。
セメントの種類はコンクリートの特徴を大きく左右するので、きちんと頭に入れておきたいところです。

でも、各セメントの特徴を覚えるだけだと、忘れやすいし、理由がわからない・・・ということになってしまうので、「なぜ強度が大きくなるのか?」「なぜ固まるのが遅いのか?」など、理由と合わせて頭に入れておくと、いろんな場面で活かせますね。

ただ、このようななぜ?の答えになる情報、あまり問題集などでは解説されていません。
以下の記事に、その答えになるものをまとめたので、併せてチェックしてください。

セメントの主たる成分について。なぜ、各種セメントがそれぞれの特徴(低熱、早強など)を持つのか?それはセメントの成分を紐解けばわかります。
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