「コンクリートの強度」と一口に言っても、色々な定義があり、使い方も異なります。
当然、使用するタイミングによっては適切な使い方の時と不適切な使い方の時があります。
本記事では、様々なコンクリート強度についての定義や使い方について説明していきたいと思います。
「強度」とは?
あえて調べるようなことでもありませんが、辞書で調べてみると以下のような意味となっています。
1 強さの程度。「鉄筋の―」
2 度合い・程度のはなはだしいこと。「―の近視」weblio辞書より
土木技術者が使う強度とは、一般的に「材料が支えられる最大の応力度」のことを指しています。
しかし、実際にコンクリート構造物の設計に携わった方ならわかると思いますが、コンクリートには「○○強度」と名の定義の違う「強度」がいくつか存在します。
この「強度」について、どのような意味でどのようなときに用いるのか、わかりやすく解説していきたいと思います。
コンクリートの「強度」
コンクリートの「強度」は、「対象とする応力度の種類」「使いどころ」によりよく分類されて使われます。
単位は「N/mm2」がよく用いられます。
対象とする応力度の種類による分類
コンクリートの「強度」は、どの種類の応力度に対する強度かによって、呼び方が異なります。
例えば、「引張強度」、「圧縮強度」、「曲げ強度」、「せん断強度」などがあります。
圧縮強度
材料がどの程度の圧縮応力度まで支えられるかを示す強度です。
一般的に、コンクリートの強度というと、圧縮強度を示す場合が多いです。
構造力学の分野だと単に「強度」というと引張を示すことが多いのですが、コンクリートは引張よりも圧縮に強いという性質があるため、逆になっていますね。
後ろに出てくる設計基準強度や呼び強度なども、圧縮強度で示されているので覚えておきましょう。
数式では、Fcと表されます。(”compression”のc)
引張強度
コンクリートの引張強度は、圧縮強度と比べて1/10~1/13程度と小さく、設計時には無視されることが多いです。
ちなみに、引張に弱いという性質を鉄筋と組み合わせることによって補っているのが鉄筋コンクリートの特徴でしたね。
数式ではFtで示されます。(”tensile”のt)
曲げ強度
コンクリートの曲げ強度は引張強度よりはやや大きく、圧縮強度の1/5~1/7程度。
数式ではFbで示されます。(”bend”のb)
せん断強度
コンクリートのせん断強度は、圧縮強度の1/4~1/6程度です。
数式ではFsで示されます。(”shear”のs)
付着強度
コンクリートと鉄筋の付着の強度を示します。
圧縮強度が大きいほど付着強度は大きくなります。また、丸鋼より異形鉄筋の方が付着強度は大きくなります。
これは、異形鉄筋の凸凹にコンクリートが引っかかる(機械的抵抗力)ことにより付着力が大きくなることによります。
そのため、土木構造物は普通は異形鉄筋が用いられていますね。
疲労強度
何度も繰り返し荷重がかかると、材料が破壊に至ることがあり、疲労破壊と呼ばれています。
この疲労に対する強度のことを疲労強度と言い、”○○回疲労強度”などと表現します。
コンクリート工学会によると、200万回疲労強度は静的強度の55~65%程度であるといわれています。
使いどころによる分類
コンクリートは設計~施工~養生~維持管理の各段階で強度が変わる材料です。
そのため、「強度」も各段階で使われ方が違ってきます。
強度の意味を正確に把握し、意味を取り違えないように注意しましょう。
設計基準強度
設計基準強度とは、コンクリート構造物を設計するときに用いられる強度で、コンクリート構造物の設計では、圧縮強度を用います。
現場で実際に打設されるコンクリートがこの設計基準強度を下回ってしまうと、設計時の構造計算を満たさないことになりますから、そのようなことがないようにしなければなりません。
コンクリート標準示方書によると、設計基準強度が60N/mm2以上のコンクリートを高強度コンクリートと呼んでいます。
※建築分野の定義と異なっているのでご注意を。
呼び強度
レディーミクストコンクリートを発注するときに指定する強度です。
通常は設計基準強度と同等の強度を用います。
レディーミクストコンクリートの種別を表す際もこの数字が使われています。
例えば、「21ー8ー20N」の場合だと、呼び強度は左端の数字21N/mm2となります。
(左から、呼び強度ースランプー骨材の最大寸法・セメントの種類 を示しています。)
配合強度
配合強度は、コンクリートの配合設計をする際に目指すコンクリート強度です。
呼び強度と同じでいいのでは?と普通は思いますが、呼び強度をいくらか割り増した強度を用いています。
コンクリートは練り混ぜ~打設を行う中で、気温や運搬時間、材料のばらつきなど、様々な要因で強度にばらつきが生じます。
そのため、呼び強度・設計基準強度と同じ強度を目指して配合設計をすると、かなり(約半分)が呼び強度以下で出来上がってしまい、設計時の条件を満たさない構造物となってしまいます。
そこで、出来上がったコンクリートの圧縮強度の試験値が呼び強度・設計基準強度を下回る確率が5%以内になるように、配合強度を設定しています。
28日強度
コンクリートを打設してから、28日後に発現する強度を28日強度と言います。
コンクリートは基本的に材齢が大きくなればなるほど強度が大きくなっていきますが、普通コンクリートの場合だいたい28日(4週間)で強度の伸びが落ち着くことから、打設から28日目の強度が基準として使われることが多くなっています。
28日以外にも、材齢によって呼び方は異なり、7日後であれば7日強度など○日強度という言葉で表現されます。
まとめ
コンクリートの強度について説明してきました。
- 圧縮強度
- 引張強度
- 曲げ強度
- せん断強度
- 付着強度
- 疲労強度
- 設計基準強度
- 呼び強度
- 配合強度
- 28日強度
いずれもコンクリートの強度特性を示す基本的な用語です。
違いや位置づけをしっかりと理解しておきましょう。
コメント
こんにちは。コンクリートの圧縮強度はFcと表されます。(”compression”のc)
と記載されています。
『F』は何の略なのでしょうか?色々調べましたが知っているのが当たり前なのか
『F』が何かわかりませんでした。教えて頂けると助かります。
宜しくお願い致します。
こんにちは。ご質問ありがとうございます。
Fc等の”F”については、私もそれらしい根拠を見たことはないのですが、
一般的に”Force”(力)と言われています。
圧縮強度は英語で”compressive strength”なので、
圧縮強度Fcの”F”がforceなのは少し違和感がありますね。
こんにちは。
丁寧な説明ありがとうございます。
forceはなるほどと思いました。
今後とも宜しくお願いします。