コンクリートはセメント、水、骨材、混和材料と空気で構成されています。
そのうち、空気はコンクリートの流動性に影響するなど、重要な役割を果たしており、空気量試験等で計測もされます。
ただ、一口に空気と言ってもコンクリートに含まれる空気には「エントレインドエア」と「エントラップトエア」と呼ばれるものがあり、似たような名前であるにもかかわらず、意味が異なります。
本記事では、それぞれの空気の特徴や役割についてまとめていきたいと思います。
エントレインドエア
AE剤やAE減水剤などの表面活性作用によってコンクリート中に生成される微細で独立し、均一に分散した空気泡のことを言います。
連行空気とも呼ばれ、ほぼ球形をしており、気泡径は25~250μm程度でAE剤やAE減水剤などの混和剤の種類によって異なります。
エントレインドエアは耐凍害性やワーカビリティーの向上に顕著な効果があります。
凍害に対しては、水が氷になるときに膨張してコンクリートにダメージを与えるのを、微細な空気の部分で吸収してあげることによって抵抗してくれます。
また、ワーカビリティーに関しては、フレッシュコンクリートの時に水分を保持する働きによるもので、材料分離を起こりにくくしたり、ブリーディングを減少させる効果もあります。
これらの効果は、気泡が小さく、気泡の間隔が小さいほど大きくなります。
ちなみに、エントレインドエアは英語で「entrained air」 。「entrain」は一般的には「乗車する」とか「同調する」と言う意味。
恐らく、連行される空気なので、このニュアンスを表すようにこような呼ばれ方になったのでしょう。
エントラップトエア
混和剤を用いなくても、コンクリートの練混ぜ中に自然に取り込まれる気泡で、通常のコンクリートには0.5~3%程度存在すると言われています。
気泡径が比較的大きくまた不定形であるため、耐凍害性やワーカビリティーの改善に寄与する効果は期待できません。これがエントレインドエアとの大きな違いですね。
むしろ、あまり多くのエントラップトエアが入ってしまうと材料に偏りが出てしまい、よくありません。
英語では「entrapped air」。「entrap」は罠にかける、などと言う意味。
意図せず巻き込まれたという意味で、このように呼ばれているのでしょうね。
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コンクリート中の空気の役割
コンクリートに関わる二つの空気についての違いについて書いてきましたが、コンクリート中でこれらはどのような役割を持っているのでしょうか?
繰り返しますが、コンクリート中の空気で役に立っているのは「エントレインドエア」の方だけ。エントラップトエアは耐凍害性やワーカビリティーの向上には寄与していません。
エントレインドエアは、前述のようにコンクリートに対してフレッシュ時も硬化後もいい役割を果たしてくれます。
AE剤やAE減水剤などの混和材の効果は、このエントレインドエアを適切に入れることによる効果なんですね。
なお、耐凍害性やワーカビリティーは、エントレインドエアの気泡間の距離の平均値を示す「気泡間隔係数」が小さいほど向上します。
一般的に、気泡間隔係数が200~250μm以下とすることが奨励されています。
まとめ
エントレインドエアとエントラップトエアの違いや、コンクリート中での空気の役割についてご理解いただけたでしょうか?
コンクリートはガチガチの物質で、固まってしまったら空気が入る隙もないように思われる方も多いですが、実はコンクリートの体積の5%程度は空気なんです。
一般的にはコンクリート体積の1~2%がエントラップトエア(もっと多かったり少なかったりもします)で、残りがエントレインドエアと言われています。
目立たないけど大切な空気の役割。フレッシュコンクリートの流動性や材料分離抵抗性などにも寄与してくるので、しっかりと理解しておきましょう。
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