コンクリートの打設の際、「レイタンス」という言葉を聞いたことがあると思います。
何となく不要なもの、除去が必要なもの、と理解して処理している場合も多いと思いますが、一体どういうものなのでしょうか?
または、同じように打設後の処理が必要になるブリーディングと何が違うのでしょうか?
さらに、コンクリートの施工不良であるコールドジョイントの原因にはならないのでしょうか?
いろいろと誤解される場合も多いこのレイタンス、コンクリート構造物を作る際には正確に処理をしておかないと、場合によっては深刻な施工不良になりかねません。
正体がわからずに重大な事態を引き起こさないよう、正しく理解しておきましょう。
レイタンスとは?
レイタンスとは、フレッシュコンクリート中のセメントの微粒子や骨材の微粒分が、ブリーディング水とともにコンクリートの上面に上昇して堆積した、多孔質で脆弱な薄層のことをいいます。
コンクリートを打設したとき、重力の影響で砂などの重たい粒子は下へ沈んでいきますが、その反対に、粘土やセメントなどの軽い粒子は、ブリーディング水と共に浮上していきます。
この微粒子がコンクリート表面に作る弱い層のことをレイタンスと呼ぶんです。
レイタンスは、正しい処理をしないままコンクリートを打ち継いでしまうと、元々のコンクリートと新しいコンクリートとの付着を阻害してしまいます。
ひび割れの原因や止水上の弱点となることが多いので、コンクリートを打ち継ぐ場合などにはこれを取り除くのが理想的です。
ただ、 建築の分野(住宅など)ではあまりレイタンスの除去は行われていないようですね。
なぜかというと、鉄筋コンクリートの場合は鉄筋で打ち継ぎ前と後のコンクリートは一体化されるため、強度的には問題ないからです。
ただし、例えばダムコンクリートや、地下水以下の地下構造物に関しては、このレイタンスを除去してコンクリートを打ち継がないと、旧コンクリートと新コンクリートの付着面が止水上の弱点となってしまうため、レイタンスの除去は適切に行う必要があります。
ダムやトンネルなどの構造物を相手にすることの多い土木分野の場合は除去するのが基本ですね。
レイタンスの除去方法
レイタンスを除去することによって、打ち継ぎ面の一体化を図ることができますが、具体的にどのような方法があるのでしょうか?
レイタンスの除去は、コンクリートの硬化前に行う場合と硬化後に行う場合がります。
コンクリート硬化前のレイタンス除去(グリーンカット)方法
レイタンスをコンクリート硬化前に処理することを「グリーンカット」と呼びます。GCと呼ばれることも多いですね。
コンクリートを打設した新しい=若い=グリーンな部分をカットすることからこの名前が付けられたそうです。
コンクリートが硬化してしまう前にブラシでこすったり、水で高圧洗浄することによりレイタンスの除去を行います。
ダム工事などでは広範囲にブラッシングや高圧洗浄できる機械を導入し、かなり大々的にこのグリーンカットが行われています。
コンクリート硬化前にレイタンスの除去を行う方がスムーズに広範囲のレイタンスを除去することができるため効率的なのですが、打設後適切なタイミングでこれを行わなければ必要以上に表面を削ってしまったり、逆に削れなかったりしてしまうので、工程上注意が必要です。
また、凝結遅延剤を用いて時間調整した上でブラッシングや高圧洗浄によりグリーンカットを行う場合もあります。
コンクリート硬化後のレイタンス除去方法
コンクリート表面にブラスト噴射を行うことによりレイタンス層を除去し、表面をざらざらにする方法が一般的です。
この場合はコンクリートが硬化してしまえばいつ行ってもレイタンスの除去が可能なので工程上の縛りがないというメリットがありますが、コンクリート硬化前にレイタンス除去を行う場合よりも時間がかかってしまうというデメリットもあります。
ブリーディングとの違いは?
レイタンスとブリーディングはよく間違えられますが、ブリーディングはフレッシュコンクリート打設後に表面に水が出てくることを言います。
一方レイタンスは、前述の通りフレッシュコンクリートを打設した後、ブリーディング水と共に浮上してくる微粒子によってできるものです。
できるタイミングも、位置も、処理方法も似通ったブリーディング水とレイタンスですが、モノとしては「水」と「微粒子で構成される脆弱層」なので、全く異なるものです。
レイタンス除去をしなければコールドジョイントになる?
レイタンスは除去しなければコンクリートの打ち継ぎ面の付着を阻害してしまうため、コールドジョイントの原因と考えてる人も多いです。
しかし、この2つは直接関係ありません。
レイタンスは打ち継ぎ面、すなわち、コンクリートが硬化した後にフレッシュコンクリートを打設するところにできるものです。
一方、コールドジョイントとは、打ち重ねを行う部分にできるものです。
つまり、一気にコンクリートを打設したかった場所なのにもかかわらず、アジテータ車が遅れたなどの影響で、最初に打設したコンクリートの硬化が始まり、一体化できなかったことにより発生する施工不良です。
コールドジョイントが発生してしまうと、本来一体化しておくべき部分がしっかりと一体化できないため、止水上の弱点となるばかりでなく、強度上も問題が生じる可能性も考えられます。
「レイタンス」も「コールドジョイント」どちらも施工不良につながるものではあるものの、そもそもの計画が打ち継ぎ面の予定だったか、一体化する予定(打ち重ね)だったか、と言う意味で全く異なるものと言えるでしょう。
まとめ
レイタンスの意味や除去方法、またはブリーディングとの違いやコールドジョイントの違いについてご理解いただけたでしょうか?
土木の大規模な構造物になるとコンクリートは大量に必要で、締固めが不可能であることから全てを一気に打ち込むことはできません。
そこで必要になるのが、打ち継ぎです。
止水上の弱点になりえる部分であり、コンクリートの状態を見ながら処理をする必要があるため、この打ち継ぎでどれだけ品質が確保できるかが、構造物の全体の品質を決める大きな要因になってきます。
レイタンスについて正確に理解して、適切な処理を心掛けていきましょう。