鋭敏比という言葉を地盤工学の世界で聞いたことがある方も多いと思います。
鋭敏比の算出方法は地盤工学、土質力学の教科書にたいてい載っていますし、この用語の定義もインターネットで検索すれば簡単に調べられると思います。
でも、「鋭敏比が大きい」とはどういう状態か、逆に「鋭敏比が小さい粘土」はどういう粘土を指すかなど、粘土の状態について具体的なイメージがついていない人が意外と多いようです。
今回は、この鋭敏比についてまとめていきたいと思います。
鋭敏比の求め方
鋭敏比の定義から見ていきましょう。
乱されない土の一軸圧縮強さと、練り返した土の一軸圧縮強さとの比。
Weblio辞書より
補足すると、この「鋭敏比」と言う考え方は、土の中でも「粘土」について記述する際に用いられます。
粘土粒子の中には、原地盤における粘土粒子の配列構造が乱れることによって、強さと硬さが低下する場合があります。
このとき、乱される前(練り返される前)の粘土の一軸圧縮強度(qu)と、含水比を変えずに練り返された後の粘土の一軸圧縮強度(qur)の比のことを鋭敏比(St)と呼びます。
式にすると以下のような感じ。
St = qu / qur
なお、明確な境目はありませんが、液性指数が1.0よりも大きい(不安定な状態)割にはせん断強度が大きいような粘土で、鋭敏比が大きい粘土を、「鋭敏粘土」や「超鋭敏粘土」と呼んでいます。
「鋭敏比が大きい」とはどういう状態?
では、「鋭敏比が大きい」または「鋭敏比が小さい」粘土というのは、どういう粘土なのでしょうか?
前述の鋭敏比の定義St = qu / qurからいうと、「鋭敏比が大きい」とは、「乱される前の年度の一軸圧縮強度と比べて、練り直した粘土の一軸圧縮強度が小さい」と言うことができます。
簡単に(不正確に)言うと、「鋭敏比が大きい」とは、「もともとの粘土にちょっと刺激を加えただけで弱くなる」と言うことになります。
気を付けたいポイント
一般的に、腐植土や海成粘土は鋭敏比の大きい粘土であると言われています。
これらの粘土は工事中の振動や、周辺地盤への衝撃などによって強度が低下してしまい、地盤が不安定になってしまう可能性があります。
基礎工事や地盤改良、トンネル工事等では、鋭敏比の大きな粘土の存在が考えられる場合は注意が必要で、場合のよっては何かしらの対策が必要です。
一般に、正規圧密された粘土の鋭敏比は5~10が多く、過圧密になればなるほど1に近付きます。
世界には、鋭敏比が100を超えるような超鋭敏粘土もあるそうですね。
まとめ
鋭敏比の考え方やポイントについてご理解いただけたでしょうか?
繰り返しますが、鋭敏粘土は、「もともとの粘土にちょっと刺激を加えただけで弱くなる」と言うことを覚えておいてください。
こういう粘土は、工事現場では「厄介な土」として扱われることが多いです。
だからこそ、何が問題で、どういう対策が必要になるのかを正確に理解しておくことが大切ですね。