ラウンドアバウト-日本には少ない交差点の秘密

ラウンドアバウトと言う交差点をご存知ですか?

日本で”交差点”と言うと、普通は十字に交差していたり、丁字路だったり、もしくはそれ以上の道路が交差している点のことで、信号が変わることによって交通を整理しているのが一般的ですね。

そんな一般的な交差点では、スピード違反、信号無視等による交通事故が後を絶ちません
近年では、歩行者、自転車を巻き込んで死亡事故につながってしまう痛ましい事故もたくさんおきてしまっています。

そこで近年注目され始めてきたのが、日本ではあまり馴染みのなかったラウンドアバウトと言う交差点です。

一体何者なのか?日本で増やせるのか?増やすべきなのか?様々な視点で描いていきたいと思います。

ラウンドアバウトとはどんな交差点?

ラウンドアバウトとはどのような交差点なのでしょうか?

一般的な交差点と対比して考えてみましょう。

一般的な交差点

まず、交差点ってどんなものがあるんでしょうか?

交差点とは、2本以上の道路が交差する点」のことを言います。 道路交通法 では以下のように定義されているようです。

十字路、丁字路その他二以上の道路が交わる場合における当該二以上の道路(歩道と車道の区別のある道路においては、車道)の交わる部分

道路交通法第二条第一項第五号

交通量が比較的多い交差点では信号を使って交通整理をしていたり、場合によっては歩道橋を使って歩行者道と立体交差したりしていますね。

道路が3本、4本、5本と交わる交差点のことを、三叉路(さんさろ)、四叉路(しさろ)、五叉路(ごさろ)と呼びます。

また、四叉路で十字に交わっている交差点を十字路、三叉路の中で”T”字に交わっているのを丁字路と呼びます。

丁字路は「T字路」とよく言われ、最近はどちらでも正解ですが、元々は法律上は丁字路(ていじろ)と定義されており、「丁」の字がよりふさわしいと考えられますね。

ラウンドアバウトとは?

さて、それではラウンドアバウトとはどのような交差点なのでしょうか?

ラウンドアバウト(roundabout)は環状交差点とも呼ばれ、以下のように定義されています。

車両の通行の用に供する部分が環状の交差点であつて、道路標識等により車両が当該部分を右回りに通行すべきことが指定されているものをいう

道路交通法第4条第3項

日本で本格的に導入され始めたのは2014年なので、歴史は非常に浅いですね。

世界的にも19世紀後半から見られ始め、田園都市構想とともに20世紀前半に発展しました。しかし、ルールが明確化しておらず、交通事故が起きることが多かったため、そのまま世界に広がったわけではありません。

1960年代になってイギリスで設計基準が設立され、1990年代から広まっていった・・・と言う歴史があるようです。

日本で言うと、交差点へは左折をして侵入。
交差点内は左側通行で、自分の生きたい方向へ左折することによって交差点から出る。
という流れで運用されます。

信号がないというのと、全て左折で済むというのが大きな特徴ですね

メリットとデメリット

ラウンドアバウトは通常の交差点と比べて特殊な構造となっているため、色々なメリットデメリットがあります。どんなことが考えられるのでしょうか?

メリット

ラウンドアバウトでは、通常の交差点のように自動車の導線が交錯することは少なくなりますし、右折車による渋滞や焦り運転もありません。

そのため、事故の軽減につながるという考え方もできるでしょう。

また、前述の通り信号がないという特徴もあるため、信号停止による渋滞等は発生しないというメリットもあります。

ルールの明確化されていない20世紀前半は、交差点外からの合流部での事故が多発していたそうですが、「交差点内の車両優先」というルールができてからは事故が低減されました。

デメリット

ラウンドアバウトは、信号がなく、交差点内の車両優先であることから、交通量が多くなると交差点への侵入が難しくなり、渋滞を引き起こしてしまうという弱点があります。

通常の交差点と比べると、処理できる交通量は一般的には少ないです。

また、通常の交差点は面積が小さいのですが、ラウンドアバウトは環状の交差点を作るため、面積が大きくなってしまうというデメリットもあります。

日本での導入は?

日本ではあまり例の少ないラウンドアバウトですが、これからは増えていくのでしょうか?また、増やすべきなのでしょうか?

実は、ラウンドアバウトの弱点である「交通量が多いときに渋滞が起きる」ことと「広い面積が必要」というのは、日本における道路の課題とぴったりと一致してしまいます。

つまり、日本ではただでさえ交通量が多く、道路に使える面積が小さいのです。

このことが、ラウンドアバウトが普及しない一つの理由と言えるでしょうし、それでもラウンドアバウトにこだわるのは得策ではないでしょう。

しかしながら、比較的交通量の少ない交差点や、右折が極端に難しい交差点などを今後設計する際には、ラウンドアバウトをひとつの選択肢として考えることはできます。

今まではあまり選択肢にもなっていなかったのかもしれません。

交通流や量、周囲の施設など、個別の要件の多い交差点設計なので一概には言えませんが、ここで使えるのでは?という観点は常に持っておきたいですね。

まとめ

近年の交差点での交通事故の多発を受けて、「ラウンドアバウトならこんな事故は起こらなかった・・・」と言う声も聞かれます。

それでは、日本では数少ないラウンドアバウトを、これからの日本では広く普及させるべきなのでしょうか?

私は、今よりは広く普及させるべきだが、「ラウンドアバウトが多数派」のような状況は作るべきではない(作れない)、と考えています。

交差点は種類によってメリット・デメリットがあります。それをよく考えて判断していくべきでしょう。

ただし、近年多発している交通事故は放っておいていいものではありません。

縁石の工夫やポールの設置など、土木が解決できる部分はまだあるはず。市民の命を守るのは土木の大きな仕事です。

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コメント

  1. 小松 より:

    はじめまして。
    読後感想です。当方は、オーストラリアに住んでいた経験があります。
    ご存じの通り、イギリスの文化、制度を大きく取り入れいているオーストラリアは、
    ラウンドアバウトが広く普及しています。住んでみてこそ体感的にわかるのですが、
    デメリットを超える多くのメリットがラウンドアバウトにはあります。
    著者様も言われていますが、交通量が目安を超えない1万台に至らないところでは、広く普及させるべきだと思います。信号機メンテおよび導入費用は大きく抑えられ、渋滞の減少、事故減少で何よりも安全性が向上します。既存の十字路の改修には、用地買収の難航が予想され、結果的に多数派にはなりにくいと思います。それでも、毎年事故が起こる場所では導入検討は必須のような気がします。なお、選択肢になっていなかったのは、導入決定当事者(役人・警察?)に、前述したような経験がないのも大きいと思われます。個人的には、多数派になってほしいですが。。。

    • bomperson より:

      はじめまして。
      本記事をご覧いただきありがとうございます。
      オーストラリアに住んでいらっしゃったんですね。体感も踏まえた感想を頂き嬉しく思います。
      ラウンドアバウトを取り巻く情勢として一番課題なのは、「選択肢として考えられていない」ことだと思います。
      その理由は、技術者の経験がないのと、前例がないことですね。
      自治体や警察の職員がYesと言える環境が整っていないのが実情でしょう。

      また、今の日本ではどうしても用地の問題が大きく、導入が難しいところも多いと思います。
      それでも、複雑な交差点やスペースを広く取れる交差点はあるので、私も今よりも普及していくべきだと考えています。
      もっというと、狭い日本だからこそ「新たな」ラウンドアバウトの形が出てこないかな、と期待している部分もあります。

      急には無理だと思いますが、徐々に増えていくといいですね。