問題
塩害環境下のコンクリート構造物の耐久性に関する次の記述について、正しければ〇、間違っていれば×を付けよ。
(1) コンクリート中への塩化物イオンの浸透抑制のために、コンクリートの水セメント比を大きくした。
(2)コンクリート中への塩化物イオンの浸透抑制のために、合成樹脂材料による表面被覆を施した。
(3)鉄筋腐食を抑制するために、セメント種類を普通ポルトランドセメントから高炉セメントB種に変更した。
(4)鉄筋腐食を抑制するために、コンクリートのかぶり厚さを減少させた。
解説
コンクリート技士試験に頻出の、塩害に関する基本的な問題です。
塩害がどのようなメカニズムでコンクリート構造物の劣化につながるのかを理解しておけば、簡単に解答できるはずです。
塩害は、塩化物イオンがコンクリート内部に水と一緒に浸入し、鉄筋まで達することにより鉄筋腐食が発生し、コンクリートのひび割れ、剥落につながる劣化機構です。
そのため、対策としては塩化物イオンをコンクリート内部に入れないことが第一になるでしょう。
そのために何を行うか考えてみてください。
ピンとこなかった方は、塩害自体の発生メカニズムについて復習しておきましょう。
それでは、各選択肢についてそれぞれ解説していきます。
(1)コンクリート中への塩化物イオンの浸透抑制のために、コンクリートの水セメント比を大きくした。
コンクリート中へ塩化物イオンを浸透させないようにするためには、コンクリートを密実にする必要があります。
密なコンクリートとするためには、他の条件を変えないのであれば、水セメント比を小さくする必要があります。
そのため、(1)は×となります。
(2)コンクリート中への塩化物イオンの浸透抑制のために、合成樹脂材料による表面被覆を施した。
合成樹脂材料を用いることによって、塩害の原因となる塩化物イオンの侵入を防ぐことができます。
そのため、(2)は〇です。
(3)鉄筋腐食を抑制するために、セメント種類を普通ポルトランドセメントから高炉セメントB種に変更した。
高炉セメントを使用したコンクリートは、水密性、耐海水性、化学抵抗性に優れているという特徴があります。
普通ポルトランドセメントよりも長期強度の増進が大きく、より密実なコンクリートとなるという特徴を有しています。
詳しくは以下の記事をご覧ください。
よって、(3)の対応は正しく、〇となります。
(4)鉄筋腐食を抑制するために、コンクリートのかぶり厚さを減少させた。
かぶりを減少させると、塩化物イオンが侵入してから鉄筋に達するまでの間隔が小さくなってしまうため、鉄筋の腐食が起きやすくなります。
そのため、塩害が危惧される構造物、部材ではかぶりをできる限り大きく取ることが奨励されます。
よって、(4)は×。
まとめ
正解は以下の通りとなります。
(1)×
(2)〇
(3)〇
(4)×
塩害は、海中や海岸にある構造物だけでなく、凍結防止剤を散布される道路橋などでも問題となることが多くあります。
鉄筋の腐食により、コンクリートの剥落などの第3者被害が起こる可能性もあるため、しっかりとした対応策を知っておかなければなりません。
担当する構造物が塩害にさらされる恐れがないか?あるとしたらどのような対策ができるか?きちんと頭に入れておきたいですね。