シールドマシンの構造について -地下を掘り進むための多様な機能

近年のシールド工法では、ほとんどシールドマシン(シールド、シールド機などとも呼ばれます)と呼ばれるマシンを使ってトンネルを掘り進んでいきます。

シールドマシンはトンネルごとのオーダーメイドが基本で、トンネルの特徴に合わせてちょっとずつ仕様が違ったり、部品によってはメーカーの特徴が出たりもします。

近年は密閉型のシールドマシンが主流で、ほとんどが機械で自動化されています。
今回は、シールド工法の主役ともいえるシールドマシンの基本的な構造や掘進の仕組みについて解説していきたいと思います。

シールドマシンの基本的な構造と役割

シールド工法使用されるマシンに共通する基本的な構造や、部分ごとの働きについて説明していきます。

下図は、シールドマシンのうち、泥土圧シールドを例にとった模式図です。こちらを参考に、以下の解説をお読みください。

カッターヘッド

地山を掘り進んでいくために地山を削るカッタービットをいくつも設置しているシールドマシンの最前方の部分。

カッタービットが摩耗してしまったり折れてしまうとトラブルにつながりやすいため、長距離掘進の際はカッタービットの耐摩耗性を向上させたり、何かあった時にカッタービットを交換できるような仕組みにする場合もあります。

カッターヘッドの形は泥土圧シールドか泥水式シールドかによって異なる場合があります

泥土圧シールドと泥水式シールドの比較については、以下の記事で詳しく書いているので、ご覧ください!

シールド工法として多く選定されている泥土圧シールドと泥水式シールド。この2つには様々な違いがあり、特徴があります。工法選定に役立つこれらの特徴をまとめました。

カッタービットも様々な種類があり、そのそれぞれで役割が違うので、主な種類と役割について泥土圧シールド系でよく用いられるカッターヘッドスポーク型を例にとってまとめていきます。

メインビット

地山を掘削するメインとなるビット。摩耗も激しいため、必要に応じて強化型のものを用いたり、2層にしてある程度摩耗したら外層が外れるようにしたり、交換が可能にしたりと、様々な工夫がなされます。

フィッシュテールビット

カッターヘッドの中心にあるカッタービットで、最初に地山に接触する部分となります。
地山を削るだけでなく、回転に伴って土砂を撹拌し、流動化させる役割も担っています。

先行ビット

メインビットより先に地山を削るビットで、メインビットより少し前に出るように設置されます。
先に地山にタッチしておくことでメインビットの摩耗を低減させる役割を持つサポート役的なビットです。

コピーカッター

曲線施工をする際や蛇行修正の際に用いるビットです。普段はカッターヘッドの側面等に収納されていますが、オーバーカット(余掘り)が直線部より大きく必要となる曲線部や、蛇行修正の際に出てきて掘進の手助けをします。

チャンバー

カッターヘッドのすぐ後部にあり、切羽の崩壊を防ぐための土圧や水圧をかけるために、土砂や泥水などを充填する空間のこと。

泥水式シールドの場合は粘性化させた泥水を、泥土圧シールドの場合は塑性流動化させた土砂を充填させ、圧をかけることにより切羽に対抗します。

なお、TBM(トンネル・ボーリング・マシン)では岩盤を相手にすることを前提としているため、このチャンバーに該当する部分はありません。
それがTBMとシールドの大きな違いと言えるでしょう。

トンネル工法のうち、マシンを使って水平にトンネルを掘り進める工法に「TBM工法」と「シールド工法」があります。トンネル掘削マシンのTBMとシールド、両者の違いはどこなのでしょうか?

エレクター

シールドマシンまで運ばれてきたセグメントを組み立てるために、セグメントを把持し、所定の位置までもっていって設置する役割を果たしています。
大規模シールドだとセグメントも大きくなるため、セグメントを破損させないような揺れ止めや安定装置を装備する場合もあります。

シールドジャッキ

シールドマシンが前進するために、組み立ててきたセグメントリングを押すジャッキ。油圧ジャッキとする場合が最近では多いようです。
このジャッキによってシールドは前に掘進していくことができます。

シールドジャッキはセグメント組立のときに外し、組み立て後にまた縮めた状態で設置しなおします。そして、このジャッキが伸びることによって掘進を行います。
このジャッキの伸び縮みによる長さのことをジャッキストロークと呼んでいます。

同時裏込め注入装置

セグメント背部に注入する裏込め注入を掘進と同時に行うことのできる装置です。
セグメント組み立て後にセグメントに予め開けておいた注入孔から裏込め注入を行う場合もありますが、作業の効率や管理の容易さ等から、同時裏込め注入とする場合が多くなっています。

裏込め注入の際は、注入材の量や注入する圧力(裏込め注入圧)によってきちんと裏込めできているかを管理できるようになっています。

テールシール

シールドマシン後部に、スキンプレートの内側を1周するように設置してあり、セグメントにこすりつけるようにして裏込め注入材がシールドマシン内に逆流してこないようにする働きをします。

ゴムなどを用いる場合もありますが、ほとんどはワイヤーブラシを用いるため、「テールブラシ」と言われる場合もあります。

何かの拍子で一部が破損すると裏込め注入材が逆流し、深刻な事故にもつながりかねないので、高土水圧下では2段、3段と何重かに設置している場合が多くあります。

スキンプレート

シールドマシンの外殻で、土水圧に抵抗する部分。
シールドトンネルが完成した後は、取り出されずトンネルと一体化して地中に残置される場合もあります。

俗に「どんがら」とも呼ばれていますね。

まとめ

シールドマシンは非常に高度な機能を持った装置がたくさんあります。

そのため、土木屋さんだけではなく機械屋さんと一緒に仕事をしていくことになりますし、幅広い知識が必要になってきます。

今後の地下空間の構築にはシールドマシンは欠かせない機械になるはずですので、その機能や役割についてはしっかりと理解しておきましょう。

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