断面力図の描き方-基本から早く簡単な描き方、コツなど

断面力については以前、以下の記事で算出の方法を解説しました。

構造力学を学び始めてから早い段階で出会うのが、「断面力」という存在です。この断面力とはそもそも何なのか、ということから、基礎的な知識や算出方法について解説していきたいと思います。

大学などで習う構造力学では、断面力を算出できるようになった後、「断面力図」を描こうという流れになると思います。

断面力とは、算出された断面力をグラフ化したものです。

この断面力図、ただ断面力をグラフにしただけと言えばその通りなのですが、荷重を受けた部材がどのような挙動をするのかを”イメージ”するのにとても役に立ちます

今回は、断面力図の基本的な描き方に加え、より実践的な描き方についても解説していきたいと思います。

断面力図を描いてみよう

今回対象とするのは、以前の記事でも例に出した集中荷重を受ける単純梁です。
以下の記事で、断面力を既に算出しています。
以下の記事で算出した断面力を基に解説していくので、併せてご覧ください。

構造力学を学び始めてから早い段階で出会うのが、「断面力」という存在です。この断面力とはそもそも何なのか、ということから、基礎的な知識や算出方法について解説していきたいと思います。

断面力図の描き方(基本)

まず、算出した断面力を用いて断面力図を描いてみましょう。時間はかかりますが、単純に断面力を点Aからの距離xで表現し、それをグラフ化すれば断面力図は描くことができます。

それぞれの断面力図に描き方の決まりがあるので、基本編としてそれについてもまとめます。

軸力図:N-図

まず軸力図。

軸力図とは、軸力の発生状況を図にしたもので、N-図とも呼ばれます。

軸力は”Axial force”ですが、ドイツ語で”Normal kraft”というので、そこからとってN-図と呼ばれています。

この例題(単純梁)の場合、部材全長にわたってN=0です。

実際設計をする際は、軸と平行の力も考慮することが考えられるので軸力図も描くことができます。その際は、軸線の上側を⊕、下側を⊖として描きましょう。

せん断力図:Q-図

せん断力図とは、せん断力の発生状況を図化したものです。

せん断力は英語で”Shear force”ですが、Q-図と呼ばれています。
これは、ドイツ語の”Quer kraft”(=せん断力)から来ているようです。

せん断力は以下のように表現できましたね。

0<x<1/2lのとき、Q=1/2P
1/2l<x<lのとき、Q=-1/2P

これを、軸線の上側を⊕、下側を⊖として描いてみましょう。

すると、点Aから集中荷重がかかるところまで正の値を取った後、載荷地点で地点で-Pだけ動き、そこから点Bまで負の値を取っていることがわかります。

曲げモーメント図:M-図

曲げモーメント図とは、曲げモーメントの発生状況を図化したもので、M-図とも呼ばれます。

このMは何を隠そう”Moment”のMですね。

曲げモーメントは、点Aからの距離xを用いて以下のように表現できました。

0<x<1/2lのとき、M=1/2Px
1/2l<x<lのとき、M=-1/2Px+1/2Pl

このグラフを、軸力図やせん断力図とは逆で、軸線の下側を⊕として描きます。これは、下に凸を正とする曲げモーメントと、実際の部材の変形イメージを合わせるためです。

なお、下に凸を正とするというのは、下に凸の場合部材下面が引っ張られることを考えると「下側が引張となる側を正とする」という言い方もできます。

したがって、鉛直部材を取り扱う際でも引張が生じる側を⊕としてM-図を描くのが正解です。

断面力図(N-図、Q-図、M-図)

先程まで説明した断面力図(N-図、Q-図、M-図)をすべて表現すると、以下の図のようになります。

一番単純な集中荷重を受ける単純梁の断面力図を描くだけでも、断面力を計算して、グラフに表して・・・となるとめんどくさいですよね。大学などの場合だと、構造力学のテストで1問にこんな時間かけていられません。

でも、ちょっとしたポイントを押さえると、こんなに労力をかけなくても断面力図を描くことができます。そのポイントは、部材がどのような挙動をするのか、という構造力学に大切なイメージを持つことです。

次の章で説明していきます。

断面力図の描き方(応用・おすすめ)

断面力の大きさについては、計算をしないと求められません。

でも、断面力図の形については、荷重の種類(分布荷重、集中荷重など)を見れば予測できてしまいます。

まずは例題で挙げたような単純梁で、その描き方を解説していきたいと思います。
今回はN=0なので、Q-図とM-図について考えましょう。

(基本)の描き方だと、それぞれを距離xを用いて表現しグラフ化しましたが、断面力図を描くだけなら、わざわざ区間で場合分けしてからxで表現をする必要はありません

せん断力図:Q-図

せん断力は軸線に対して直角に働く力です。そのため、部材に対して直角方向の荷重がかかっていれば、その点でその荷重分だけせん断力に変化が起こることが予想できます

今の例題で言うと、部材ちょうど真ん中で「P」だけせん断力が変化します。

手順は以下の通り。

①左図より、点A~点CまではQは正。正の値で線を引く。

②集中荷重がかかる点でPだけ負の方向に変化。

③あとはそのまままっすぐ伸ばす。

④ポイントポイントで断面力を求めておく。ここでは点A~点Cの範囲だけ求めればOK。

曲げモーメント図:M-図

モーメント図を考える場合に大切なのは、点A、点Bの支点でモーメントが0になること。ピン支持とローラー支持でモーメントは0なんですね。
固定支持の場合はモーメントが発生するので注意が必要です。

手順としては簡単です。

①荷重載荷点の曲げモーメントの値を求める。

②直線で結べば完成。

ポイント

断面力図を簡単に描くためには、荷重の種類によってどのような線になるかを頭に入れておくと便利です。

以下に、部材にどのような荷重がかかったらどのような線になるのか、Q-図、M-図についてまとめたので、参考にしてください。

これを頭に入れておけば、荷重条件によって断面力図が大体どのような形になるのか想定でき、変曲点や変化点の断面のみ断面力を求めるだけで、図を描くことができます。

支点や支持部の違いによる断面力図への影響についても、以下の記事で触れています。気になる方は確認してください。

支点が違えば力の伝わり方が違います。支点の違いが何を意味するのか、どんな特徴があるのか、について正確に理解しておくことは、部材の設計や構造力学の問題を解くために重要になってきます。

何に使われるの?

断面力図の描き方について解説してきましたが、この断面力図は実際にどのような場面で用いられるのでしょうか?

構造物設計の現場では、対象とする構造物に対していくつかのパターンの荷重条件を考えます。その各パターンごとに、例えばどこに最大曲げモーメントが生じるか、などといったことが一目瞭然になり、とても便利なので、断面力図に関する知識は重要です。

実際は断面力図を簡単に作成できる計算ソフトがあるので作業自体は簡単なのですが、我々技術者は、算出される結果が正しいかどうかを判定できる能力を有していなくてはなりません。

そのためには、本記事のような基本的な内容は確実に押さえておかなければいけないので、しっかりと理解しておきましょう。

まとめ

構造力学の基本ともいえる断面力図。

断面力図は、構造力学の基本でありながら、構造物設計の世界ではあらゆるところで登場します。

計算自体は難しくないのですが、実務で活かすためには、その意味を正確に理解しておくことが大切です。

基礎基本であるからこそ、意味を大切にしていきたいですね。

そして、意味が分かれば簡単に断面力図を描くことも可能です。

なかなかイメージの付かない人も、問題に取り組んでいくと見えてくる場合が多いので、多くの問題にチャレンジしてみると力になりますよ!

演習問題

断面力図を描く基礎的な問題。分布荷重をどのように扱うか、分布荷重があるときどのような断面力図になるか、理解しておきましょう。
集中荷重がかかった片持ちばり断面力図を作成する問題。ヒンジ支点やローラー支点と違い、鉛直、水平、回転を固定する特徴を持つ固定端と、全てがフリーな自由端の両方を持つはりについて、どのような断面力図になるか考えましょう。
複数の集中荷重を受ける単純ばりの断面力図を作成する問題。ちょっと複雑になった時に、どのように計算するか、構造力学の知識を使って楽をしましょう。
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