古くから用いられてきたアーチ構造。
アーチ橋とは、橋梁に生じる鉛直荷重の作用を、アーチリブの圧縮力として地盤へ伝えるというとても合理的な構造した橋梁です。
また、美しい景観としてのアーチ橋に惹かれる人も少なくないのではないでしょうか?
そんなアーチ橋ですが、紐解いてみるといろいろな種類があり、そのそれぞれについて特徴があります。
今回は、橋梁の1つの種類であるアーチ橋について、分類の仕方や種類、特徴などについてまとめていきたいと思います。
アーチ橋の分類
アーチ橋には様々な分類の仕方がありますが、今回は「無補剛アーチ橋」と「補剛アーチ橋」の2種類に分けて考えてみましょう。
この2つのアーチ橋では設計上の考え方が大きく異なります。
無補剛アーチ橋とは、基本的にすべての荷重に対してアーチリブのみで抵抗するアーチ橋を指します。そのため、荷重による曲げモーメントについてもアーチが負担することになります。
一方、補剛アーチ橋とは、アーチリブのみでなく、桁も補剛することにより、アーチ構造と補剛桁両方で荷重に抵抗する構造をしています。
無補剛アーチ橋
無補剛アーチ橋には固定アーチ、2ヒンジアーチ、3ヒンジアーチとタイドアーチの4つの種類があります。
固定アーチ
アーチリブが両端部が地盤と一体化していて、固定端となっているアーチです。
鉄筋コンクリートのアーチ橋では、両端部を機械的なヒンジ構造とするのが難しいため、この固定アーチとされるのが一般的です。
また、支間長が長い場合も固定アーチとする場合が多いです。
構造力学的には3次不静定の構造ですね。
2ヒンジアーチ
こちらはアーチリブの両端部をヒンジ構造としたアーチ橋です。
鋼アーチ橋で一般的に採用されています。
1次不静定構造となり、設計計算上不確定な要素が少なくできるのがメリットです。
3ヒンジアーチ
アーチリブの両端をヒンジ構造とし、アーチの中間点でヒンジ結合を有するアーチ橋です。
特殊な構造で、一般的にはあまり採用されません。
構造的には静定構造となります。
同じように両端固定+アーチ中間点のヒンジのある1ヒンジアーチもありますが、いずれも特殊な例と言えるでしょう。
タイドアーチ
上記の3つのアーチは両端の地盤に水平反力を伝える構造ですが、タイドアーチ橋は桁部に水平反力を負担させる構造です。
両端の地盤に水平力を負担させるのが難しい場合に採用されます。
補剛アーチ橋
補剛アーチ橋の代表例として、ランガー橋とローゼ橋について説明していきます。
ランガー橋(Langer Bridge)
ランガー橋は、アーチリブは圧縮力のみを受け持つとして設計されるため、アーチリブが細いのが特徴です。
その代わり、曲げモーメントや軸力を橋桁で受け持つので、補剛された桁は太い場合が多くなります。
桁橋をアーチリブで補剛したようなイメージですね。
アーチリブは直線的で、多角形の形状です。
逆ランガー橋
ランガー橋は一般的に下路形式ですが、上路形式としたものを逆ランガー橋といいます。
トラスドランガー橋
ランガー橋の吊材を斜めに張ったアーチ橋です。
吊材を斜めにすることで、水平方向(橋軸)の変位を拘束することができるので、橋全体の剛性が高まるという特徴があります。
ローゼ橋(Lohse Bridge)
アーチリブと補剛桁両方で曲げモーメントや軸力、せん断力を負担するように設計されたアーチ橋です。
そのため、アーチリブはランガー橋より太く作られます。
アーチリブは曲線部材として作られる場合がほとんどです。
設計的には、アーチリブも補剛桁も断面力を受け持つようになりますので、高次の不静定構造となります。
逆ローゼ橋
ローゼ橋を上路形式としたアーチ橋です。
ニールセンローゼ橋(Nielsen Lohse Bridge)
吊材を斜めに配置したローゼ橋です。
吊材を斜めにすることにより、水平方向の変位を小さくできるのはトラスドランガー橋と同じです。
アーチ部材は荷重を受けると、橋軸方向から見た内側に倒れる方向に力がかかります。
アーチが内側に倒れるような変形に対抗しやすいように、アーチリブを内側に倒すことにより、アーチの真ん中の横つなぎ材の部材長を短くする場合があります。
横つなぎ材を短くすることにより座屈に対して抵抗しやすくしているんですね。
このような橋梁は、バスケットハンドル型ニールセンローゼ橋と呼ばれています。
籠の取っ手のような形だからこの名前になったんですね。
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他の分類の方法
無補剛アーチ橋と補剛アーチ橋の2種類、桁が橋全体にかかる荷重を負担するかどうかで分けて考えてきました。
でも、アーチ橋は奥が深く、もっといろいろな分け方があります。
そのうちいくつかを紹介します。
桁の位置での分類
アーチと桁の位置関係での分類です。
この分類の仕方だと3種類、上路式アーチ、中路式アーチ、下路式アーチに分類されます。
上路式アーチは、アーチリブの上部に桁が位置されているアーチ橋の形式で、中路式アーチはアーチリブの中間、下路式アーチはアーチの下部に桁が位置しているアーチ橋です。
アーチの部材の構成での分類
アーチリブの部材構成でも分類されることがあります。
アーチリブとして、I型、箱型断面や鋼管を用いたソリッドリブアーチ。
鋼管を用いたものは特にパイプアーチとも呼ばれます。
アーチリブにトラスを用いたアーチはブレースドリブアーチと呼ばれます。
また、下路式アーチで、アーチと桁との間がトラスで構成されているアーチは、スパンドレルブレースドアーチと呼ばれています。
まとめ
アーチ橋は着目点によっていろいろな分け方があります。
そのそれぞれを繋げて、例えば「上路式ブレースドリブ2ヒンジアーチ橋」などといった呼ばれ方をする場合もあります。
一口にアーチ橋と言っても、色々な使い分けがされており、普段見るアーチ橋が何に分類されるか考えてみるのも面白いですね。
他の橋梁についてもまとめているので、以下の記事をご覧ください!