シールドトンネルとは?-マシンで掘る都市トンネル

近年都市部で多く用いられてきているシールドトンネル。

地上部から掘削することがないため、 既設の地下構造物の下にも構築が可能な工法です。

一方で、大掛かりなマシンを使うことからコストはちょっと高め、断面の自由度は低いなどの問題点も考えられます。

今回は、シールドトンネルの特徴やトンネルの構築過程について書いていきたいと思います。

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シールドトンネルとは?

シールド工法の概要

シールド工法とは、トンネルの先端にシールドと呼ばれる鋼鉄製の外筒を設けて、 崩壊しようとする土を押さえながら掘削を行い、内部で セグメントと呼ばれるブロックをリング状に組み立てていく工法のことを言います。

円形が基本ですが、最近では楕円形や矩形、大小2つの円を連結した形など、技術の進歩に伴っていろいろな形状が用いられています。

歴史

シールド工法は、フランスで産まれイギリスで活躍した技術者、マーク・イザムバード・ブルネルという人が開発し、テムズ河を横断するトンネルで最初に用いられました。

テムズトンネルは1825年に掘削を開始、1843年に開通し、 今でもロンドンの地下鉄として使われています
いつか見てみたいですね。

このシールド工法は、木造船の木材を食べて穴を掘り、自分が食べたところに石灰質を擦り付けることによって「トンネル」を構築する特徴を持つフナクイムシからヒントを得たと言われています。

フナクイムシの写真:東京下水 千代田幹線事業HPより
http://www.chiyodakansen-gesui.tokyo.jp/service/method_shield.html

日本初のシールドトンネルは、1917年(大正6年)に掘削を開始した、 秋田県由利本荘市のJR羽越線羽後岩谷~折渡間にある折渡トンネル で、途中での工事中止もありながら1924年(大正13年)に開通しました。

この当時のシールドは、現在のような大掛かりなマシンを使って自動で掘進するわけではなく、掘削機の中に十数人が入って掘る 手掘り式

事故も多く、現場の作業員が何名か犠牲になったそうです。

特徴

大掛かりな”マシン”での掘進

シールドトンネルの特徴は、他のトンネルと違い、大掛かりなマシンを使って掘進を行うことでしょう。

シールドマシンはほとんどの場合”オーダーメイド”で、一度使ったらもう一回同じものを他のトンネルで転用することはありません。
部品ごとで再利用することはありますが、基本的にはトンネルを構築するためにマシンを作ることになります。

そのため、シールド工法を選定する際には ある程度の長さを掘進する計画でなければ、コストが増大することがあります。

また、機械での施工管理が主となるため、 他のトンネルと比べるとトンネル掘進に必要な人の数は少ないという特徴もあります。

本設構造への負担

もう1点シールド工法の特徴として挙げておかなければならないのが、本設構造への負担です。

シールド工法では、リング状に組み立てたセグメントをジャッキで押すことによってシールドマシンを前に進めていくため、 将来的にトンネル本体として使用するセグメントに大きな負担をかけることになります。

他のトンネルでも橋梁でも、将来の構造本体にこれだけ負担をかけるような工法はあまりまりませんよね。

シールドトンネルは円形が基本の為、土圧を分散させることができ、土圧へ抵抗することだけを考えたらセグメントの厚さは薄くすることが可能です。
でも、このように組み立てたセグメントを利用して掘進していくため、 施工時のことも考えてセグメントの厚みを決定しないといけないんです。

シールドマシン

シールド工法では、シールド(シールドマシン、シールド機)と呼ばれるマシンで掘り進めていきます。

そのマシンは地下で掘進を行う際に必要な様々な機能がついており、それによって高精度なトンネルの構築が可能になっています。

シールドにはいろいろな種類があり、大きく分けて 開放型シールド密閉型シールドがあります。

開放型シールドは、切羽前面がシールド内部から見えるようになっており、地山が緩い場合には切羽の崩壊や地下水の出水等のトラブルが起こる危険性があります。

そのため、近年のシールドの ほとんどは密閉型シールドになっています。
密閉型シールドもいくつかの種類に分けられますが、大規模トンネルで最も多く用いられるのは、 泥土圧シールド泥水式シールドの2つです。

シールドの構造や機能については以下の記事で詳しく書いていますので、併せて読んでくださいね。

トンネルを掘進するシールドマシン。マシンのどの部分がどんな役割を持っているのか、図も交えながら解説していきます。

シールドトンネルの施工手順

シールドトンネルは主に以下のような手順で施工されていきます。

  1. 立坑の構築
  2. 発進
  3. 掘進
  4. 到達
  5. 解体

1. 立坑の構築

まず、シールドマシンを組み立てたり、発進・到達等をするための「立坑」を構築する必要があります。

立坑は地上と接続しているため、トンネル完成後も、換気や地上からトンネル内への接続用の通路として用いられることが多くあります。

工法は様々ですが、垂直シールドや開削工法、ケーソン工法等の工法が用いられます。

2. 発進

立坑からトンネルを掘り進みたい方向に向けてシールドを発進します。

この発進と到達の場面が、 地下水の出水などのリスクが大きくなるタイミングなので、必要に応じて 発進防護、到達防護と呼ばれる地盤改良を行う場合が多いです。

また、発進や到達はなるべくシールドを真っすぐにして行うのが基本です。斜めに発進をしたり、曲線的に掘進を行う場合は注意が必要です。

3. 掘進

一度発進をしてしまえば施工のスピードが速いのもシールド工法の特徴です。

掘進の際は、掘削→ずり出し→セグメント組み立て→掘削の順番で進んでいきます。 組み立てたセグメントを反力にとり、ジャッキで押して前に進んでいきます。

密閉型シールドの場合、前に進む際には、切羽に圧力をかけることにより、切羽前面の崩壊を防ぎながら掘削していきます。

また、セグメントはシールド機の内側で組み立てますが、組み立てられたセグメントの背面にはモルタル系の材料で 裏込め注入を行い、地山を緩ませることなく掘進を行います。

一昔前はセグメント組み立て後にセグメントに開けた注入孔から裏込め注入する場合がありましたが、最近はセグメント組立と同時にシールドから裏込め注入を行う、 同時裏込め注入が採用されることが多いですね。

4. 到達

2.発進と同様、出水等のリスクを伴うところです。適切な到達防護や、到達位置の位置合わせが重要になってきます。

5. 解体

マシンが立坑に到達すれば、解体し、外に運び出すことになります。

このとき、オーダーメイドで作ったシールドは再利用できないこともあるため、シールドの鋼殻は引き抜かれず残置される場合も多くあります。

まとめ

都市部での地下空間が複雑化してくると、地下構造物を立体的に交差させてトンネルを構築する必要が出てきます。

そういう場合にシールドトンネルは力を発揮します。今後都市部で作られるトンネルでは、多く用いられることでしょう。

しかしながら、比較的新しい工法であることもあり、トラブルが起きる事例もちらほらあります。

高度な施工管理が必要とされるシールド工法なので、専門的な知識をしっかり身に着けておきたいですね。

その他のトンネルについては以下の記事をご覧ください。

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