問題
下図に示す図形の図心を求めよ。
解説
構造力学の基礎的な問題の1つ。図心を求める方法はいくつもありますが、今回は断面1次モーメントを用いた方法で解きましょう。 断面1次モーメントは、平面図形内の1点(y,z)を囲む面積要素をdAとして、以下の式で定義される物理量です。
Gz=∫ydA
Gz:z軸に対する断面1次モーメント、y:z軸からの距離
単位はm3、mm3などとなります。
問題は図心の求め方ですが、回転モーメントと同じようなイメージを持つことで簡単に解くことができます。
図心(重さが均一なら=重心)では、回転モーメントはゼロになります。また、重心を通る軸から離れた位置の回転モーメントは「距離」×「重さ」で表現できますね。
ある点の回転モーメントをM、ある点から図心までの距離をy0、重さをWとすると、
M=y0×W
と考えることができます。
「重さ」を「面積」に、「回転モーメント」を「断面1次モーメント」に置き換えて考えてみましょう。
断面1次モーメントも、任意のz軸に対する断面1次モーメントをGz、任意のz軸から図心までの距離y0、z軸から距離y0の面の面積をAとすると、
Gz=y0×A
となります。
このあたりの考え方は、こちらの記事にまとめています。
つまり、任意のz軸を設定し、そこから図心までの距離をy0とすると、以下の式からy0を算出することができます。
y0=Gz/A
この式を用いて、図心を求めていきましょう。
回答
下図のようにy軸とz軸を置き、z軸から図心までの距離をy0とする。
z軸に対する断面1次モーメントGzは以下の通り。
Gz=∫ydA
=y1×A1 + y2×A2
=1 × 16 + 6 × 16
=112 [cm3]
面積A=A1+A2=32[cm2]なので、 y0=Gz/A より
y0=Gz/A
=112/32
=3.5 [cm]
y軸から図心までの距離z0は、対称性から明らかにz0=4.0[cm]なので、図心の位置は以下の位置となる。
(y,z)=(3.5cm,4.0cm)
まとめ
断面1次モーメントは、概念がわかりづらい断面量の1つです。
実務では電算でさらっと計算されるので、あまり気にすることが少ないと思いますが、この断面量のイメージと定義をしっかりと頭に入れておくと、構造計算の内容の理解が容易になるでしょう。