実務から考える都市計画-都市計画は建築?土木?

今も昔も土木分野の数ある専攻の中で高い人気を誇っている分野に「都市計画」に関わる分野がありますね。

でも、同じ建設を相手にする建築分野にも「都市計画」という専攻は当たり前のように存在します。

元々境界線がはっきりしているわけではない「建築」と「土木」ですが、この「都市計画」はどちらに分類されるのでしょうか

それぞれの定義や実際のプロジェクトなどから考えていきます。

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そもそも建築と土木はどう違う?

簡単にイメージしやすい言い方をすると、比較的小さいもの(住宅、ビル)は建築、大きいもの(ダム、橋梁)は土木の分野と言うことができるでしょう。

大まかにはわかっている方が多いと思うのですが、その境界について考えてみると、意外とあやふやなものです。

そもそもこの2つの学問はどのように違うのか、まず、正確に定義を見ていきたいと思います。

建築

Wikipediaで定義を調べてみました。

建築とは、人間が活動するための空間を内部に持った構造物を、計画、設計、施工そして使用するに至るまでの行為の過程全体、あるいは一部のこと。また、そのような行為によって作られた構造物そのものを指すこともある。(Wikipediaより)

建築物(=人が活動する空間を持った構造物)を作る行為のこと全般を指しているようですね。住宅やビルなどが代表例として考えられます。他にも、病院やタワーなど大きな構造物も建築物として建てられる場合が多いです。

土木

一方、土木はどのように定義されているのでしょうか?建築と同様にWikipediaで調べてみました。

土木(工学)とは良質な生活空間の構築を目的として、自然災害からの防御や社会的・経済的基盤の整備のための技術(土木技術)について研究する工学である。 (Wikipediaより)

「良質な生活空間の構築」とされており、建築よりも少し対象が広いような書き方ですね。対象物はダムや橋梁。他にはトンネルや鉄道などが土木構造物の代表例です。

建築における都市計画と土木における都市計画

では、都市計画は建築、土木どちらに分類されるのでしょうか?

まず、都市計画の定義から見てみましょう。

都市計画とは、都市の将来あるべき姿(人口、土地利用、主要施設等)を想定し、そのために必要な規制、誘導、整備を行い、都市を適正に発展させようとする方法や手段のことである。(Wikipediaより)

都市計画とは、都市の発展のために土地の活用方法を検討し、実現させていくことを示しています。都市計画学という学問分野は、もともと海外で発展し、20世紀初めごろに日本にやって来たと言われています。

この分野は、”都市計画”と言うくらいですから、都市を計画する学問や行為のことです。でも、”都市”って一言で言っても、駅前のひと区画を指すのか、市町村レベルを指すのかなど、いろいろな大きさが考えられますよね。

この記事をお読みの方の中にはご存知の方が多いと思いますが、都市計画は建築と土木のどちらの分野にもまたがっています

そのため、実際に都市計画のプロジェクトが行われる際には、建築分野、土木分野双方の技術者が関わり、進められていきます。

ただ、建築分野と土木分野で関わる内容はちょっとずつ違ってきているように思います。その違いについて、将来都市計画を志す学生さんなどにわかりやすいように、私の個人的見解も入りますが、まとめていきたいと思います。

建築における都市計画

建築における都市計画では、団地やニュータウンだったり、駅前の商業施設の開発などを取り扱うことが多いです。

ご存知の通り住宅やマンション、ビルなどは基本的には建築分野ですが、この集合体についても建築分野の技術者がメインで関わることが多いようですね。

具体的に建築における都市開発を行っている企業などの団体は、UR(独立行政法人都市再生機構)やJR、私鉄各社などが挙げられるでしょうか。

「人間が活動するための空間」を作るのが建築の役割ですから、建物一つで完結することなく、都市の中でどんな役割の建物がどこにあったら便利か、安全か、綺麗か、などを考えることも当然建築の役割と言えるでしょうね。

土木における都市計画

一方で、土木における都市計画では何を対象にしているのでしょうか?土木分野では、駅や路線、道路などを対象とすることが多いように思います。

建築分野よりもより大きな視点で、「駅をどこに置くか」、「道路をどこに通すか」などを考えることが多いです。建築がメインと前述した駅前の開発でも、大規模な建築物の基礎工事などは土木の技術者が担当することが多いですね。

これに関わる団体は、地方自治体がメインでしょう。市町村レベルの都市計画は、自治体が「都市計画マスタープラン」を策定し、それに沿って進められていく流れが一般的です。車や電車などを使った人の移動を相手にするときは土木が関わってくると言えるでしょう。

まとめ

建設という大きなくくりでよく混合される建築分野と土木分野。現在のその役割分けについて本記事で紹介しました。

でも、都市計画を進めていくときは、建築だけ、土木だけ、で進められることは稀でしょう。もっと言うと、あまりに建築と土木で縦割りをしすぎると、プロジェクトがうまくいきにくいかもしれません

例えば、一つの団地を造ろうと、建築分野の技術者が関わっていったとしても、団地の中の道路は当然土木分野の仕事になります。
また、土木分野で市町村レベルの都市計画を行っても、そこに建造される建築物がなければ都市が意味を成しません。

私は、このような建築と土木の縦割りは、各プロジェクトの進行を妨げていると感じています。どこまでが建築で、どこからが土木か、と言うことを考えるより、それぞれが他方の知識を今よりも多く得ることの方が大切だと思います。

現状では、大学で土木と建築の専攻を分けている場合が多いですし、設計の基準等も建築と土木では全く異なります。

そのため、この記事ではその境界線について述べているわけですが、将来のことを考えると、色々なハードルはあれど、これらの融合できる部分を探していくことが必要であると私は考えています。

皆さんも、何が建築で何が土木なのか、それはなぜなのか?一緒ではだめなのか?構造物を見ながら思いを巡らせてみてください。

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