就活ルールの廃止-土木業界への影響は?「就職」はどうあるべきか?

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2018年7月、経団連の中西会長から、「就活ルールの廃止」が提案されました。

今まで日本の社会を支えてきた新卒一括採用⇒終身雇用という流れが大きく揺らぎかねない発表でした。

まだ撤廃されることが決まったわけではないものの、今後行政や経団連は撤廃も視野に議論をしていくことでしょう。

このことは当然土木業界にも影響を及ぼします。
特に、昔ながらの企業風土が残っている場合の多い土木業界においては、この決定による変化は大きいものがあるのではないでしょうか?

実は、私はこの中西会長の発言には大いに賛成です
これによって、日本の社会が抱える課題の一部が解決に向かうのではないか、そしてそれは同時に土木業界の改善につながるのではないかと考えているからです。

現在の就活ルール

就活ルールの廃止による影響について書く前に、現在の就活ルールについて振り返ってみます。
現在(2018年時点)では、大卒の新卒採用については次の流れが一般的です。

  • 3月   就職活動の解禁(会社説明会等)
  • 6月以降 採用試験の実施(面接等の開始)
  • 10月   就職内定
  • 翌4月  就職

簡単に言うと、大学3年生の3月から説明会を回り、大学4年生の6月から面接を受け始め、大学4年生の10月に内定が出る、という流れです。

このルールは、大学生の本職である学業が就活によって疎かにならないよう、就活の長期化を防ぐために制定されています。

しかし、このルールは既に形骸化しており、大学3年生の頃の企業インターンシップ等で実質的な選考を終え、6月に入ったらすぐに採用試験の合格通知(内々定)を出すというのが実態のようです。

就活ルール廃止による社会への影響(メリデメ)

就活ルール廃止のメリット

就活ルール廃止のメリットについて、3つの視点で書いていきます。

  1. 教育の質の向上
  2. 企業の働き方改革の推進
  3. 企業の競争力の向上

1. 教育の質の向上

日本における教育と社会のつながりを考えたときに、「中学や高校を卒業してすぐに就職した人」よりも、「大学や大学院を出た人」の方が将来社会的にいい地位に就くというのが今の常識じゃないでしょうか?

この現状に私は違和感を持っています。

今のルールだと、高校を卒業し、大学に進学、新卒一括採用の流れに沿って就職して定年まで勤めあげるというルートが一般的・理想的で、「学校」の最終目標が「就職」となってしまっています。

これだと、大学の目的が就活、高校の目的が大学受験、さらには中学の目的が高校受験・・・となってしまうと思いませんか?

学校の目的は就職ではなく勉強です。
高校生は大学に行かなければならないわけでもないし、勉強をしたければ大学に行けばいいのです。
「勉強はしたくないけど、いいところに就職するために大学へ・・・」というのは本来は良くないことだと私は思っています。
現状として、大学に行けるなら行った方が将来の選択肢が広がるので、その選択をすることは間違いではないと思います。)

現状の就活ルールが廃止されれば、高校卒業後すぐに就職した人でも、社会の中でキャリアアップして、よりレベルの高い職種に転職することができるようになり、大学を卒業しているかどうかなど関係なく高いキャリアを望めるようになるでしょう。

そうなれば、大学に行くという選択をした人は、先に社会に出た人に負けないように大学でできる限り多くのことを学ばなければなりません。高校でも、大学受験を目的とする必要がない人は、興味のある学問を深めることができるようになるでしょう。中学も同様です。

極端に言ったので現実味がないかもしれませんが、そんな世の中へ向かうことができると考えています。

その結果、まともな教育をしない大学は淘汰され、中学高校の教員も就活や受験に縛られない本質的な教育をできるようになるなど、いい影響が出ることが期待できます。

2. 企業の働き方改革の推進

ひょっとすると、就活ルールを廃止したときに、一番損をするのは企業かもしれません。というのも、新卒一括採用をして、社内で教育し、定年まで働かせるという文化の中だと、従業員の為を考えずとも労働力を確保できるからです。

どういうことかというと、企業は一度社員を採用すると、その社員は逃げる(転職する)ことが難しいため、悪い条件でも働かせ続けることができるのです。転職すると新卒採用組よりもその社内でのステップアップが遅くなるというのが従来の常識ですからね。

言うまでもなく、日本のブラック企業や働きすぎの文化はこれが原因の一つとなっています。

就活ルールが廃止されれば、新卒と同じ土俵で転職希望者も戦うことになります。ちゃんと働いてきた人は転職がしやすくなるでしょう。

そうなれば、企業は従業員を引き留めるために従業員の働きやすい環境を提供したり、給料を上げたりと、いろいろな工夫が必要になります。今の日本の社会で問題になっている、過労や若者の薄給などの課題は解決に向かうのではないでしょうか?

3. 企業の競争力の向上

見方によっては、前述の2.企業の働き方改革の推進と逆境するのでは?と思われる方もいるかもしれませんが、実は企業の競争力を高めることにもつながるというのが私の意見です。

今までの日本の社会では、従業員が悪い条件でも長い時間働くのが当たり前だったため、他国と比べて「マネジメント」が機能していない企業が多いと言われています。なぜなら、企業などの上層部がマネジメントをせずとも従業員が頑張ることによってある程度の結果が出てしまうからです。

でも、従業員が悪い条件だと他の場所に簡単に転職できる、という社会になれば、企業の上層部はうかうかしていられません。従業員の満足度を上げたり、より少ないコストで最大の成果を出すためにマネジメントをせざるを得ないのです。

転職ルールの廃止により、最初は企業にダメージがあるかもしれません。しかし、労働力の減少は日本全体の人口減少を考えると近い将来絶対にやってきます。このタイミングでマネジメントを習得しておくことは、結果的に企業の競争力を高めることにつながることでしょう。

また、日本の商文化に(今は)なじめない外国人従業員の力も借りやすくなるというメリットもあります。

就活ルール廃止のデメリット

今まで就活ルールの廃止による良い話ばかり書いてきましたが、本当にいいことばかりで悪い面はないのでしょうか?

そんなことはありません。デメリットもあります。物事にはいい面もあれば悪い面もあって当然で、それを考慮したうえで物事を決定していくのが当たり前でしょう。

では、悪い面-デメリットについて考えます。

私の考えるデメリットは、「競争の激化」です。これは就職しようと思っている学生にも、企業にも当てはまります。

1. 就職希望者の競争の激化

「就職希望者」は今で言う「就活生」や「転職活動中の人」を意味していると思ってください。既に述べたように、就職希望者は、転職であろうが新卒であろうが同じ土俵で戦うことになります。学生から新卒で就職しようと思う人は、社会人を経験した人と闘わなければならなくなります

就活ルール廃止に反対の人は、これが一番の不安なのではないでしょうか?

実際に、アメリカなどは転職は簡単にできる反面、日本のように大卒の就職率は高くありません。これは、新卒であろうと社会人経験者であろうと同じ土俵で戦うため、より経験値の高い社会人経験者が勝る可能性がどうしても高くなるからです。新卒一括採用のシステムが、日本の学生を守り、若者の就職率を高くしているのは紛れもない事実なのです。

2. 企業の競争の激化

就活ルールの廃止のメリットで、「企業の競争力の向上」を挙げましたが、その反作用が競争の激化というデメリットです。比較的大きな企業であれば、待遇を良くするなどして従業員を引き留め、長く働いてもらうことは可能なのかもしれません。

では一方で、日本を支えている中小企業はどうでしょうか?

中小企業の中には、従業員を引き留めるほどの資金力がなく、働き手がいなくなり廃業に追い込まれるような企業が増えていくかもしれません。そんなことになれば、大切な技術力の継承が難しくなったり、企業の数が減ることによって、結果的に働く場がなくなる、失業率が増える・・・などといったことも考えられます。

それでも就活ルール廃止をすべき理由

繰り返しになりますが、私は就活ルールの廃止に賛成です。就活ルール廃止によるメリットとデメリットについて書いてきましたが、その上でなぜ、廃止に賛成なのか、書いていこうと思います。

基本的には、いろいろな問題はあるにせよ、日本の企業は今よりも競争をすべきだと考えています。(競争によるデメリットは前述のとおりです。)なぜかと言うと、既に競争は避けられない時代になってきているからです。

今は世界中のあらゆるところにインターネットが使える環境があって、いつでもどこでも世界中とつながることができます。人やモノの移動についても、1日あれば地球の裏側まで行ける世の中です。今まで日本の国内で戦っていた企業でも、海外の企業や技術と闘わなければならなくなることは明白でしょう。さらに、日本は労働力の減少が予想されたり、英語が苦手な人が多かったりと、国際競争の中で不利な点が多いのです。

今のうちに競争というものに慣れておかないと、今のままでは海外の企業にとって代われれるのも時間の問題なのではないでしょうか?

それは企業においても、学生においても一緒です。学生も今よりも勉強をしなければならないようになるでしょう。

そう考えると、少し厳しいようでも競争ができる社会の体質になっておくことが、結果的に日本の社会のためになると考えるべきではないでしょうか?

土木業界への影響は?

日本社会への影響について書いてきましたが、では、土木業界へはどのような影響を及ぼすのでしょうか?

メリット、デメリットについて、基本的には上述の日本社会全般に関わる内容と同じですが、特に土木分野ではどうなのか?ということを考えていきましょう。

メリット

土木業界って良くも悪くも古い体質、昔ながらの日本の文化の染みついた企業が多いですよね。「土木」を相手にする以上、官公庁と仕事をすることが多いので、古いままなのでしょう。そんな業界にあって、就活ルールの廃止のメリットはどのようなものがあるでしょうか?

私が思うに、最もメリットが大きいのは、働き方改革の推進です。土木(建設)業界が3K(キツイ・汚い・危険)と呼ばれているのは皆さんご存知のことかと思いますが、これを改善していかない限り、多様化する社会の中での土木業界の労働力不足はどんどん進行していってしまいます。

そこで、土木業界の「働き方」の競争によって働き方が改善されていくことで、土木離れを防ぐことができるのではないでしょうか?もちろん、他の業界も同じように改革が進めば現状と話は変わりません。この就活ルールの廃止の議論のタイミングで、土木業界がどれだけ踏ん張れるかが非常に重要です。

次に考えられるのが技術力の向上です。転職が容易になることにより自社に必要な技術力を持つ技術者をヘッドハンティングして、技術開発を進めていきやすくなるかもしれません。企業の中でも、高い技術力・知識を持った技術者が転職してくることによって、社内での競争が起き、技術力の研鑽が推進されることも考えられます。

デメリット

土木業界というのは、古い体質を改めようと法改正などが行われても、その抜け穴を見つけたり、隠れて破ったりしたりして、中々改革されていない業界でもあります。リニア新幹線工事の大手ゼネコンの談合などはそれをよく表す例かもしれません(これについてはいろんな意見がありますが)。

その業界で競争の激化が起こるとどうなるでしょうか?健全な競争の中で企業として向上していくといいのですが、どこかでルール違反が起こる可能性があるかもしれません。例えば、先ほど言ったような談合や、同業他社からの転職を認めないなどの風習が考えられます。そんなことにならないよう、ルール廃止はあらゆる視点で慎重に議論が必要ですね。

技術者がすべきこと

これまで、就活ルール廃止による社会への影響やそのメリット・デメリットについて述べてきましたが、我々技術者は、この起こりうる変化に向けて何をしたらいいのでしょうか?いろんなことが考えられますが、技術者が考えなければならないのは、自らの市場価値の向上でしょう。就活ルールの廃止によって、徐々に社会が変わって行き、技術者個人の競争も起こっていくことでしょう。社会としてはこの競争は技術力の向上につながりますが、技術者個人としては競争に向けて準備をしておく必要があります。

今までと同じように働いていても、技術力の高い技術者が転職してくるかもしれませんし、転職時も広い範囲から優秀な技術者と闘うためにも、技術力を向上しておくことが重要です。

では、市場価値の向上のために何をしたら良いのでしょうか?

一つは王道で、専門技術力を高めてください。今関っている仕事での経験は確実に武器になります。言わずもがなですが、自らの専門分野を伸ばしていくことはとても重要です。

二つ目は、土木業界全体や社会の流れを見ておくこと。いくら専門技術力が高くても、「転職」となれば土木業界や世の中の流れを知っておいた方がいいです。企業の重要なポジションに行く人間を採用しようと思ったら、専門力が高いのは勿論、人間力や、これからの社会を見通す力が求められるからです。

まとめ

就活ルール廃止は、今の社会を考えると確実に実行しなければならないものだと考えています。しかしながら、良いことばかりではないというのも事実です。どのようにメリットを大きく、デメリットを小さくできるか、検討していく必要があるでしょう。段階的に進めて行ったり、不正が起こらないように監視したり・・・

でも、これから日本を本当によくしていくためには、起こしていかないといけない変化だと思います。私は、教育面、経済面での効果に大きな期待をしています。

少なくとも、1年廃止してみて苦情が多かったから次の年に復活、なんてことはないように経団連には取り組んでほしいものです。我々も市民の声としてしっかり監視するとともに、社会を良くするために協力していけるといいですね。

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